1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、馬の気持ちについてお届けする。
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この時期は毎週のようにビッグレースが行なわれ、ファンにとっては週末が待ち遠しくて仕方がないといったところでしょう。GI以外でもこの先をにらんだ重要なレースが多く、トレセンも常に緊張感に包まれています。今週11日(土)に東京競馬場の1400mで行なわれる京王杯スプリングカップ(GII)では、管理馬レッドモンレーヴが連覇を目指します。
この馬は昨年こそマイル戦線で頑張ってくれましたが、デビュー戦は2000mで2着。2戦目の初勝利も1800mだったように、けっしてマイル一辺倒とは思っていません。今年はさらなる可能性を模索、2000mのGI大阪杯に出してみたいとも考えていました。それで2月25日のGII中山記念(1800m)を使ったけれど、16頭立ての15着、勝ち馬から2.8秒差と結果は散々でした。
今回はレッドモンレーヴの気持ちに寄り添って、その時のことを振り返ってみます。こういう見方をすることで、次のレースを検討する時の参考になることもあるかもしれません。
レースに出るのは2023年の11月以来ということもあったのか、レース前は走る気十分で、パドックでも一番後ろを歩かせることにしました。返し馬でもやる気満々だったけど、ちょっと気持ちが入りすぎていたような気もします。
この日は小雨模様で馬場は稍重。前に行きたい馬が多く、馬場の割には速いペースだったため、レッドモンレーヴは大きく離れた最後方。追走面で課題があり、促すと反発してしまうタイプ、「俺はやりたいようにやるんだよ!」という気性です。ついていけなかったということではなく、このペースではいずれ前の馬の脚が止まるだろうという判断もありました。なのでこのポジション自体は間違っていなかったように思います。馬も前半は、「さあ、いつ仕掛けるかな」と手ぐすねを引いていたかもしれません。
ところが3コーナーから4コーナーにかけては特に馬場が悪く、ギアチェンジをしようとしてもスピードが上がらない。前の馬がそのまま残ってしまうという流れになった。これが良馬場ならば、しっかり地面をとらえることができて追い上げていけたと思います。
そこに至るまでも、ずっと「走りにくいなあ」と思っていたみたいです。これは彼が一番我慢できそうもない展開で、さらに離れたから馬が走るのをやめてしまったといったところです。