彼女はポルトガル留学中、ランチは大学の教室間を移動しながらサンドイッチを口に押し込んでいたとか。こうして数年で学位を取ったが、その反動か、体を壊してしまった。
そんな彼女が現地の鍼灸院で施術を受けていたときのこと。鍼灸師がお弟子さんを集め、うつ伏せに寝ているN子さんの臀部を見せて、「いいか、学問をするというのはこういうことだぞ」と言ったというの。茶色の“座りダコ”ができていたんだよね。彼女とは長い間会っていないけど、この話を思い出すといまでも私は泣きそうになる。
で、カイロ大学を卒業したと主張する小池百合子さんだけど、彼女もまた朝から晩まで4年間、辞書をめくっていたのだろうか。いやいや、N子さんを間近で見てきたからわかるけど、彼女と小池さんでは人間のタイプが違いすぎるって。
こう見えて、私も20代にイタリア語を習得したいと志を立てたことがある。週に3日、語学学校に通って土日は個人レッスン。朝から辞書を開いていたんだから、いま思えば笑うしかないけど、あるときイタリア旅行中に「私は本格的な語学習得に向いていない」と突然、納得したんだよね。
理由は簡単。コミュニケーション能力が邪魔をするのよ。身振り手振りに数少ない単語をやりくりすれば、食う寝る遊ぶくらいはどうにかなる。でも、読み書きは辛気くさい単語や面倒な文法を覚えないとできない。そのとき「私に語学はムリ」と諦めたんだよね。
もしかしたら小池さんは大嘘こきかもしれないが、正直いって私は彼女が嫌いではない。てか、私はお尻に座りダコを作ったN子さんではなく、間違いなく小池さんタイプだ。でも決定的な違いがある。目の前にある出世階段をどうしても駆け上りたいという野望や、出世階段を引き寄せるためならなんでもするという貪欲さよ。そして、それを隠すに充分な優雅な言葉づかい。彼女の“ございます語”を聞くと私たちはなんとなく、彼女はハイソな女性だと勘違いさせられるんだよね。
でも、本当にハイソな人が、かつて一緒に暮らした女性から実名、顔出しで告発されたりするだろうか。側近中の側近だった環境省の元キャリア官僚の告発に耐えられるか。さぁ、どうする! 今度ばかりは命運尽きたか。それともまた奇手で私たちを煙に巻くのか。“百合子マジック”を楽しんでいる場合じゃないんだけど、6月の都知事選まで目が離せない。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年5月23日号