【週刊ポスト連載・医心伝身】前号では軽症の腰部脊柱管狭窄症に対する新治療のTSCP(経仙骨的脊柱管形成術)を伝えた。これが重症になると脊椎や椎間板の変形に向けての治療が必要になる。
以前は背中側を大きく切開し、骨から筋肉を剥がす手技のため、出血や痛みがひどかったが、現在はごく小さい切開を何か所か行ない、脊椎を支えるインプラントを体内で組み立てる手術が実施されるなど症状や患者に合わせた治療の選択が可能だ。
重症の腰部脊柱管狭窄症になった場合、脚の痛みやしびれのほか、歩行障害や排尿障害など様々な症状が起こり、生活の質は著しく低下する。
治療中も鎮痛剤はあまり効果がなく、外出もままならない患者が多い。そこで狭くなった脊椎を補強する手術が行なわれる。以前は切開部が大きく、出血や痛みがひどいので、回復に時間がかかることも多かったが、ここ10年で患者への負担が少ない低侵襲腰椎後方椎体固定術(MIS‐TLIF)など、いくつかの治療法が開発された。
前号に引き続き、慈恵大学病院整形外科・脊椎・脊髄センターの篠原光副センター長に話を聞く。
「MIS-TLIFとは筋肉を温存しながら変形した椎間板を取り除き、自家骨とケージを入れて神経の圧迫を解除する治療です。皮膚に16mmの傷を何か所か開け、そこから筋肉の繊維を切らないようにJプローブという器具を挿入します。X線透視装置のモニター画像で確認し、ガイド越しに羽根付き中空スクリュー(チタン製インプラント)を挿入して適切な場所に設置します。そして羽根を折り、体内で経皮的にインプラントを組み立てます」