広い視点を持つ「キリン語」
NVCのコミュニケーション手法は、基本的に「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」の4つの要素で成り立っている。【1】目の前で起きていることを客観的に言葉にする(観察) → 【2】その際に生じた自分の気持ちを受け止める(感情) → 【3】その感情の大元にある必要としていること、満たしたいことは何かを相手に伝える(ニーズ) → 【4】ニーズを叶えるために協力してほしいことをお願いする(リクエスト)。
この作法を意識しながら会話を進めると、誰かを敵にすることやぶつかり合うことがなくなり、自分や相手の本当の気持ちに触れることができるという。
「NVCは別名『キリン語』とも呼ばれています。キリンのように長い首で全てを見渡すような広い視点を持つこと、大きなハートを心掛けることが、NVCを行うにあたり、実はとても重要だからです。対して、私が以前、娘に衝動的に発していたような暴力的な言葉を『ジャッカル語』と呼んでいます。私のように多くの人は気付かずに、ジャッカル語で話しているかもしれませんね。
講座を受けたからといって、キリン語はなかなかすぐに身に付くものではありません。人にはコミュニケーションをとる時の癖があって、気持ちを切り替えられないことも多々あります。だからこそ、日々の練習が必要なんです。初めは、感情的になってジャッカル語が出てしまったり、すぐに誰かのせいにしてしまったり……。でも諦めないで10回のうち1回でもできたら、自分をほめてあげましょう。
コミュニケーションなので、実際の対話の中で練習するのがおすすめです。仲の良い友達やパートナー、地域のサークルなど、悩みをシェアできる仲間たちと対話の広場を作って練習してみてください。お互いに共感の練習をするうちに、次第にNVCの話し方に慣れてきて、ついには自然と定着していきます」
これから初心者がNVCを取り入れる際に気を付けることを聞いてみた。
「イライラしている時は、無意識でジャッカル語が出てしまいがち。そんな時は大きく深呼吸をしてスローダウン。この1拍を置けるかどうかが、実はとても大切です。気持ちに余裕がないとイライラしやすいので、なるべく予定を詰め込まず、ゆっくり過ごせる心の余裕をもっておくこと。また現代人は、私もそうですが、隙間時間ができるとついスマホに手が伸びて、いらない情報を入れてしまいがち。ネットやSNSの情報から少し離れてボーッとするデジタルデトックスの時間を作ってみるのもいいですよ」