1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、皐月賞とダービーについてお届けする。
* * *
風薫る5月、いよいよ春競馬はクライマックスシーズンを迎えます。
19日は3歳牝馬によるオークス(優駿牝馬)。桜花賞はどうしても2歳の早い時期にデビューした素質馬の闘いで、前半から流れに乗っていかなければならないけれど、オークスは年明けにデビューした馬でも間に合うことがあるし、800m距離が延びることでレース展開が違ってきます。
直線の長い東京競馬場ということもあって、まぎれがなく、エンジンのかかりが遅くても、追ってから味のある馬、じわじわスピードが乗ってくる馬が健闘することがある。追い込み馬の馬券を買っている人は、応援のしがいがあるのではないでしょうか。
一方のダービーは皐月賞から400m延びるだけですが、舞台が小回りの中山競馬場から東京競馬場に替わります。臨戦過程としては前走皐月賞を使った馬が多いのですが、レースの性格としては別物といっていい。凡走した馬にもチャンスはあるし、両方勝つようならとても強い馬だということです。
「ダービー馬はダービー馬から」というように、2007年にタニノギムレットの子ウオッカが勝って以降、11頭がダービー馬の産駒です。このレースを勝てば種牡馬になることは確実なので、日本競馬の未来を感じさせてくれるレースでもあります。
今年はキズナ産駒が何頭か出走しますが、昨年は1頭もいなかったし、2022年、2021年も1頭ずつしかいませんでした。キズナの初年度産駒は2017年に生まれて2019年にデビュー。マルターズディオサやビアンフェなどの活躍に触発され、2020年に種付けされて生まれた子供たちが今年のクラシック世代。つまり“ひと回り”したわけです。キズナの父はディープインパクトですから、勝てば3代にわたるダービー馬になります。