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「スーパーの買い物カゴ論争」で考える「立つ鳥跡を濁さず」の美学

(写真/PIXTA)

個人の生き方が問われている(写真/PIXTA)

 日本人の意識が様変わりしつつあると言われる。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

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 先日、スーパーの買い物カゴの戻し方に関して、ちょっとした論争が盛り上がりました。きっかけはスーパーで働いている人からのXへの投稿。使い終わったカゴを戻すときに、取っ手を水平に戻さなかったり、カゴを斜めに戻したりする人がしばしばいると指摘し、「次の人がカゴ戻す時のこと考えないの?」と疑問を呈しました。

 その投稿を取り上げたネット記事が注目を集め、2000件を超える大量のコメントが寄せられます。「そりゃそうだ。あれは嫌だよね」という当たり前の話ですが、それでも文句が付くのがネットの味わい深いところ。一部ではありますが「スーパー側がそれを客に求めるのは図々しい」「なぜ他人のために自分が手間を賭けなければいけないんだ」という謎の意見もちらほら。そういう人が、迷惑なカゴの置き方をしていくんでしょうね。

 スーパーで買い物をしたあとにカゴをどう置くかは、ルールが明文化されているわけではありません。ちゃんと置かなかったからといって、スーパーを出禁になるわけでもありません。あくまで個人の美意識や生き方の問題です。ちゃんと置くだけで小さな気持ちよさを味わえるのに、それを放棄するのはもったいないと言えるでしょう。

 昔から「立つ鳥跡を濁さず」という諺があります。水鳥が飛び去ったあとも水は澄んだまま変わらない、という情景を表わす言葉です。私たちはいろんな場面でこの諺を意識しますが、それは「跡を濁さないほうが自分が気持ちいいから」。会社の転退職や男女の別れといった大げさな場面だけでなく、日常生活においても常にそうありたいものです。

スーパー、飲食店、トイレ……。日常生活で「跡を濁しがち」なシチュエーション

「スーパーの買い物カゴ論争」をきっかけに、うっかり跡を濁しがちな状況を考えてみましょう。「こんなの当然やってるよ」と感じる項目が多いかもしれませんが、あらためて意識することで、「跡を濁さない自分」をこっそりホメてあげることができます。

 まずスーパーで買い物するときに気を付けたいことから。「カゴにレシートや野菜のカケラを残したまま重ねない」「セルフレジで出てきたレシートは、台に残さずに持って帰るなり自分で捨てるなりする」「カートは同じタイプが並べられている列に戻す(違うタイプの列に突っ込まない)」「駐車場の所定の位置以外にカートを置きっぱなしにしない」などなど。気を付けていても、あわてているとやらかす可能性があります。

 喫茶店や食堂ではどうか。「帰ろうと立ち上がったときに椅子を後ろに引いたら、そのままにせずテーブルの近くに戻す」「テーブルの上のカップやおしぼりなどは、なるべく寄せておく」「テーブルの水滴や食べかすは紙おしぼりや紙ナプキンなどでさっと拭う」といったことをすれば、ほんのひと手間で「跡を濁さなかった快感」を得られます。

 定食などを食べ終わったときは「食器や箸をできるだけ整った状態にしておく」というのも、心がけたいところ。店の種類や雰囲気によって「正解」はさまざまですが、少なくとも割り箸を折って丼に放り込むといった行為は、間違いなく跡を濁しています。そもそも、いちばん大事なのは「飲み物や食べ物を無闇に残さない」ですね。食べきれない場合があるのは仕方ありませんが、少しのご飯粒を茶碗に残すのはかなり残念な行為です。

 飲食店の場合は「どうせ店員が片づけるんだから、気をつかう必要はない」と言いたい人もいるでしょう。そういう人に「あくまで自分の美学の問題だから」と説明しても、きっとわかってはもらえません。ご賛同いただけるみなさまにおかれましては、ともに「自己満足の喜びを知っている幸運」を噛みしめながら楽しく生きていきましょう。

 そのほか、お店や公共の場所でトイレを借りたときは「トイレットペーパーは真っすぐ切って、必要以上に垂らさない」「便器のふたを閉めて出る」という点に気を付けたいところ。もし汚してしまった場合は、シレッと立ち去らずに「可能な限りのリカバリー」を試みましょう。また、最近は自動的に流れるトイレが増えていますが、無意識のうちに油断してしまうと、「流し忘れる」という最大級に“跡を濁す”事態を招きかねません。

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