彼女が演じるキャラクターを見ていると、感情移入し、行く末が気になり、幸せを願いたくなってしまう……伊藤万理華という女優ではなく、演じる役柄を前面に押し出せることが評価につながっているのでしょう。
もう1つ忘れずにふれておかなければいけないのは、伊藤さんの実績。2017年末で乃木坂46を卒業してからの6年あまり、彼女は30作を超えるドラマ・映画・舞台に出演し続けて女優としての経験を積み重ねてきました。
さらに伊藤さんは「第13回 TAMA映画賞 最優秀新進女優賞」「第31回 日本映画批評家大賞 新人女優賞」を受賞。業界内では3年前あたりからその演技力が認められていたのです。
今春のダブル出演はそんな実力と実績を踏まえたものであり、昨秋放送の「夜ドラ」『ミワさんなりすます』(NHK総合)で起用していたことも含め、いかにもNHKらしい実力重視のキャスティングである様子がうかがえます。ちなみに『パーセント』はNHK大阪放送局の制作であり、『燕は戻ってこない』は東京にあるNHK放送センターの制作。今回の同時起用は、どちらからも評価されていることの証だったのです。
伊藤さんは同じ乃木坂46の1期生である西野七瀬さんや生田絵梨花さんほど目立たないものの、同グループのOG女優では深川麻衣さんと並ぶ実力派として業界内ですでに認知された存在。NHKは特定の俳優を継続起用することで知られているだけに、近い将来、朝ドラや大河ドラマへの起用も期待できそうです。
さらにNHKのドラマ出演で知名度が上がれば、これまでほぼなかった民放ゴールデン・プライム帯のドラマ出演も期待できるでしょう。そのポテンシャルを見る限り30代に入ったころ、押しも押されもせぬ主演女優になっていても決して驚かないのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。