連続テレビ小説『虎に翼』(写真/NHK提供)

連続テレビ小説『虎に翼』(写真/NHK提供)

「自然体な寝顔に見惚れた」

 1993年に石田にとって初となる連続ドラマ主演作『彼女の嫌いな彼女』(日本テレビ系)を手掛けたプロデューサーの山本和夫氏はこう語る。

「妹の石田ひかりさんの主演作『悪女』(1992年)も手掛けましたが、ひかりさんが天真爛漫な天才肌なのに対して、石田さんは等身大で、しっとりとした魅力が新人時代からあった。“私が私が”と前に出るタイプじゃないけれど、センターに置いても映える女優。

 当時演出もやっていて、大人しい石田さんに『もっとテンションを高く』と若手演出家にありがちな表面的な指示を出しましたが、そこにハマるタイプではなかった。きっと僕が求めたテンションで演じていたら不自然になっていたと思います。彼女はそういうさじ加減が当時からできる人でしたし、そんな自分の魅力をわかっていたと思います」

 母親役から独身女性まで50代になってからも石田の出演作は途切れることがない。『虎に翼』を観ながら山本氏はこう考えていると言う。

「今でも覚えているのが、助手席に座っているシーンの撮影中に数分の待ちが入り、石田さんがその場でふっと寝ちゃったんです。その寝顔がまた可愛くてカメラマンと一緒に見惚れたんですよ。まだ新人なのにそんな場でも素でスッと寝ちゃう、そういう天然で自然体なところがあったし、ストレスのかかる現場でも動じない人だった。俳優というのは演技力以上に人間としての魅力が大事。

 今でこそ『奇跡の50代』『ナチュラルなお一人様』としても愛されているけれど、それは彼女の揺るがない魅力に皆さんが気づいたということ。30年以上を経て、彼女は自然体ながらも年齢とともに人間の深みも増して演技の幅を拡げた。だからこそ、このような母親役が演じられるんだなと思って眺めています」

 石田自身、はるを「とにかく母としての強さを感じる、かっこいい人」と評すが、これから物語をどう彩っていくか──。

※週刊ポスト2024年5月31日号

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