渋谷・ハチ公前で撮影をする外国人観光客(イメージ、時事通信フォト)
日本人のノリに合わせている
筆者は5月のゴールデンウィーク直前、東京の六本木、渋谷、新宿をそれぞれ昼と夜に訪れた。日中、確かにどこにいっても外国人観光客がいて、まさに「押し寄せている」ことを実感したが、他人の迷惑を顧みない態度、横暴な振る舞いを見せる外国人観光客は見当たらない。駅の案内板を見て立ち止まり、通路の往来の邪魔になっている、などという例はあったものの、これを迷惑と感じるほうがおかしい、と思うレベルである。
ところが、夜の渋谷や六本木に行けば、大騒ぎする外国人観光客の姿があちこちで見られた。禁止区域での路上喫煙はもちろん、地べたに座ってコンビニ弁当を食べたり、ゴミをそのまま歩道に置いていくなど、まさに言われているような「オーバーツーリズム」が生み出したとされる負の光景だ。ナイトクラブなどが林立する六本木5丁目交差点近くの路上に座り込み、缶チューハイを片手にタバコを燻らせていたのは、カナダから観光で来日したというマイクさん(20代)だ。話しかけたところ、悪びれる様子もなく、むしろ興奮気味に筆者に近寄ってきた。
「六本木はとてもエキサイティングな街。こんな都会の路上で飲酒したり、タバコを吸えるなんて他の先進国ではあり得ない。日本はどこに行っても整然としていて美しく、清潔なことは知っています。でも、そうでない場所があると聞くと行きたくなるし、そこで日本人が酔っ払ってタバコを吸い、大声を出したり踊ったりしているのを見て、こちらも楽しくなって、その日本人とブラザーになることもあるよ」(マイクさん)
先出の情報番組デイレクターが言ったように、マイクさんもその場所にいる「日本人」の振る舞いを真似しているというのである。いや、真似というより、マイクさんたち外国人観光客は、その場にいる日本人のノリに合わせている、といって良いかもしれない。
「真面目な日本人だって、実はクレイジーなんだというのが面白い。私の友達や家族も、ぜひここに連れてきたい。一見スラムのように危険に見えても、日本はやはり安全。海外の六本木のような歓楽街だと、女性1人で歩くのも危険です。六本木はそうではない」(マイクさん)
マイクさんが「参考」にしたという日本人の姿は、夜の六本木や渋谷では外国人観光客の姿よりもずっと多く見られた。路上での飲酒や喫煙はもちろん、街ゆく女性をナンパしたり、嘔吐したりゴミを散らかしたり、中には全裸でコンビニに入店を試みようとする日本人の酔客もいて見るに堪えないが、その姿を面白がって眺めたり、スマホで撮影しているのは外国人観光客なのだ。