広島大学病院では関係者との意見交換の他、肝炎患者との交流の場も設けられた。患者それぞれに辿ってきた闘病の歴史がある。若い頃に受けた輸血で肝炎に感染してしまった人、劇症肝炎克服から時間が経って肝硬変を発症した人、伍代と同じく血液検査で肝炎の感染が見つかった人――。
集まった患者は同じ経験を持つ伍代に心を開いて、肝炎への想いを切々と語り合った。伍代もひとりひとりとまっすぐ向き合い、話に聞き入った。
40代でC型肝炎の陽性とわかるも治療の初期で一時中断してしまった60代の男性は、先延ばしにした反省を口にした。現在は肝がんの治療中だという。
「肝炎ウイルスが体からきれいにいなくなってもその先で肝硬変に進行することも、肝がんに進行することもある。病気をしてこの体は自分ひとりのものじゃないと身に沁みました。早期に検査して適切な治療をしないと、家族に迷惑をかける。自分の体に責任を持つか持たないか、自覚が何より大事だと思いました」
交流を終えた伍代にその言葉が重く、響いていた。「“検査をして”“治療を受けて”と、口うるさく心配する人が必要かもしれませんね。自分のためにもご家族のためにも、私たちみんなに肝炎の正しい知識が大切なんだと、痛感しました。患者の皆さんにはしっかり治療して、元気になってほしいなと願います」 怖いのは、体内にウイルスがいると知らずに何十年も放置してしまうこと。「ピロリ菌は胃がんになりやすいことは知られていても、肝炎ウイルスが肝がんへ繋がることはそれほど知られていません。自覚症状がなく進行する肝炎の怖さをもっと周知しなくては」
広島県では本年度、肝炎ウイルスの血液検査と連動した啓発を計画しているという。伍代は肝炎プロジェクトの活動に新たな課題が見つかったと、大いに刺激を受けた様子を見せた。
早期発見と早期治療を今まで以上に強く訴え、検査の実行力を伴ったアクションでさらに一歩前へ踏み出す。広島県の先進的な姿勢や肝炎患者の生の声を胸に刻んで、今後の啓発活動に弾みをつけたいと語った。