“朝に手でにぎったおにぎり”や“朝に急須でいれたお茶”が、夕方までそのままテーブルに置いてあっても、それらをためらいなく口にする人はほとんどいないだろう。だが、スーパーやコンビニの棚に長時間並んでいても、食中毒の心配は無用とばかりに手がのびる。それは問題ないことなのだろうか──。“長持ち食品”の安全性についてレポートする。【前後編の後編。前半を読む】
手作りしたものと大幅に消費期限が違う食品にも注意が必要だ。おにぎりを例にあげてみよう。エフコープ生活協同組合の調査によれば、石けんでしっかり手を洗い、素手で握った場合、食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌は10時間で1000倍以上増殖する。加工食品ジャーナリストの中戸川貢さんはこう話す。
「家で握ったものは1日も持たずに食べられなくなるのに、コンビニのおにぎりは数日経っても品質が変わらない商品がざらにある。その理由はご飯の中に植物油や添加物入りの酢を入れることで雑菌の繁殖を防いでいることにあります」
市販のおにぎりの食品表示欄には、原材料として「ご飯」もしくは「白飯」と表記されている。一見すると添加物は加えられていないように見えるが、ここにもカラクリがある。
「『米』ではなく『ご飯』などと表示されている場合、調味酢や油が隠れています。原材料表示は、素材から離れるほどに添加物が多くなる傾向にある。例えばサンドイッチであれば原材料の欄に『パン』ではなく『小麦粉』と書いてある商品を選ぶことで、添加物の量は少なくなります」(中戸川さん・以下同)
コンビニやスーパーではホイップクリームやカスタードクリームを使用した菓子パンが常温かつ数日間そのまま並べられているが、あれもまた「保存料」や「日持ち向上剤」が添えられているから。
「ホイップクリームを使った菓子パンのほとんどは消費期限を延ばすためにリン酸塩を用いている。避けた方がいいことは明白です」
同じく常温でスーパーの棚に並び、一度ふたを開けてもバッグの中に入れて持ち歩くことができるペットボトル飲料にも、ソルビン酸と同様に微生物の増殖を抑える「安息酸ナトリウム」が使用されていることが多い。大幅な日持ちの裏には相応の理由があることを、しっかり意識しておくべきだろう。食品表示アドバイザーの垣田達哉さんが説明する。
「使われている具材の種類が多く、調理法が複雑な食品ほど品質を保つための添加物が多くなることも覚えておいてほしい。その最たる例がラーメンです。
インスタントであれば、麺のやわらかさや弾力性を保つために使われるかん水には発がん性が疑われていますし、具材も一緒に入っているカップ麺になればそれに加え、着色料などの添加物の量が一気に増えます。中でもカラメル色素には発がん性物質が含まれるとされ、かん水との相乗効果でリスクが高まることは間違いありません」