求められ続けるブラッシュアップ
そして、なぜ日テレは何らかのテーマに一本化せず、異なるジャンルやテーマの番組を並べるのか。
今春、同局は「コア層の個人視聴率獲得」に加えて「配信再生数なども狙っていく」という戦略の見直しがあり、そこで音楽番組やドラマが浮上。音楽番組はネット上ではなかなか見られないライブ感の価値が高く、ドラマは配信再生数のランキング上位を占めるなどの強みを持っています。
以前から日本テレビは最もマーケティングに長けていて、スポンサー収入につなげるのがうまいテレビ局。そんなマーケティング巧者の日本テレビが選んだ「ジャンルやテーマを絞るより、コア層に受けることを優先して番組を並べる」という戦略は的中するのか。「ジャンルやテーマを絞って並べることで続けて見てもらおう」という他3局とは真逆の戦略だけに、編成部の真価が問われることになりそうです。
まずは「どちらの戦略が正解なのか」が問われ、不正解だったほうが戦略の見直しを余儀なくされるでしょう。ちなみに現時点では日本テレビの動物→音楽→ドラマという流れは結果や反響に結びついておらず、各番組のブラッシュアップが求められそうなムードが漂いはじめています。
しかし、テレビ朝日の“知的好奇心”は「収入につながりづらい」ことが指摘され、TBSの“グルメ”は「低め安定」というきらいがあり、フジの“笑い”は「当たり外れが大きい」という課題があるのも事実。「不正解ではないが正解とも言えない」という状態が続きそうな感があり、けっきょくこちらも土日戦略の軸となる看板番組が誕生するまでブラッシュアップが求められていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。