芸能

30年以上の沈黙を破ってサブスク解禁のちあきなおみ 『喝采』のプロデューサーは「活動再開の可能性はまだまだある」

1974年、コンサートで熱唱するちあき。彼女の全盛期を知らない若い世代にもファンは多い(写真/共同通信社)

1974年、コンサートで熱唱するちあき。彼女の全盛期を知らない若い世代にもファンは多い(写真/共同通信社)

 1992年に芸能活動を休止して以来、公の場から姿を消したちあきなおみ(76才)が大きな決断を下した。デビュー50周年を迎える6月10日から、音楽サブスクリプションサービスで往年の名曲の配信が決定。昭和歌謡ブームで若い世代にも彼女の名前が浸透するなか、沈黙を破る動きがあったのだ。果たして、このまま活動を再開する可能性はあるのか。【前後編の後編。前編から読む

 幼い頃からステージに立ち、米軍キャンプでジャズを歌っていたちあきが、『雨に濡れた慕情』でデビューしたのは1969年。学生運動が盛んで、フォークミュージックが大流行していた頃だった。

「ちあきさんは独特な世界観と群を抜く歌唱力で注目を浴び、翌年の『四つのお願い』でNHK紅白歌合戦に初出場しました。大きな転機となったのはやはり1972年の『喝采』でしょう。後に桑田佳祐さんや宮本浩次さんら多くのアーティストにカバーされた同作は約80万枚を売り上げる大ヒットを記録し、第14回日本レコード大賞を受賞。流行歌手としての人気を不動のものとし、ドラマチック歌謡と呼ばれるちあき節が確立されたのです」(レコード会社関係者)

 女優としても活躍していたちあきが、1973年にドラマで共演した宍戸錠さんの紹介で出会ったのが、宍戸さんの実弟で元俳優の郷えい(えいは金偏に英)治さんだった。4年間の極秘交際を経て周囲の反対を押し切り1978年に結婚。郷さんが社長を務める個人事務所に移籍したちあきは一時期、芸能界を干されたが、その経験がふたりの絆をより強くした。

「裏方に徹した郷さんは、社長兼マネジャーとしてちあきさんを守り、彼のおかげで彼女は音楽に集中することができたといいます。演歌路線を押し付けようとするレコード会社に反発し、自身の音楽を追求したちあきさんは1980年代前半にシャンソンやジャズ、洋楽のカバーアルバムをリリース。アルバムのプロデューサーを務めたのも郷さんでした」(前出・レコード会社関係者)

 郷さんは喫茶店も経営するなどして家計を支え、夫婦生活は公私ともに充実していたが、幸せな時間は長くは続かなかった。肺がんを患った郷さんは懸命な看病の甲斐なく1992年9月に他界。火葬場でちあきは「ごめんなさい……」と繰り返し、ひつぎにしがみついて号泣したという。

 ちあきの代表曲『喝采』は、愛する人を失ってもステージに立ち続ける女性を歌った悲しい歌だ。その歌詞とは裏腹に彼女は郷さんの死後、表舞台から姿を消した。

 最愛の夫を亡くした後、ちあきは毎日欠かさず墓参りを続け、自宅でひたすら写経をしていた時期もあったという。引退こそ表明しなかったものの、一切の活動を休止し、周囲には“断歌”を宣言。プライべートでカラオケに行ってもマイクを持つことはなかったという。ちあきの元マネジャーで『ちあきなおみ 沈黙の理由』(新潮社)の著書がある古賀慎一郎氏は言う。

「本当はもっと歌いたかったと思います。自分の帰るところは歌しかないという思いもあったんじゃないでしょうか。それでもあのとき、断歌を決めたのはちあきさんの覚悟。どんなことにも毅然と向き合う、揺るぎない強い意志を持ったかたでした」(古賀氏)

 そのちあきがかつて一度だけ自ら復帰を口にしたことがある。郷さんが亡くなって2年ほど経ち、ようやく落ち着きを取り戻しつつあったときのことだ。

「『もう一度歌ってみようかな』と、ちあきさんがポツリと言ったことがあったんです。周りのかたが『焦ることはないよ』と助言したために実現することはなかったものの、彼女は歌を諦めたわけではなかった。引退を明言したことは一度もありません」(前出・レコード会社関係者)

 古賀氏が続ける。

「今年は彼女のデビュー55周年であり、郷さんの三十三回忌でもあるんです。元来、ちあきさんは数字に無関心で、誕生日におめでとうございますと言うと『私、いくつになったんだっけ?』と言うような人。周年のことを気にしたこともないでしょうが、郷さんのこととなれば話は別です。以前、55という数字を見て『ごうごうだ』と言っていたことがありましたが、デビュー55周年という節目も、(サブスク解禁と)何か関係があるのかもしれませんね」

関連記事

トピックス

地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン