與真司郎が、約2年半ぶりにアーティストとしてステージに戻ってくる。2021年の11月~12月にかけて開催されたAAAの6大ドームツアー『AAA DOME TOUR 15th ANNIVERSARY -thanx AAA lot- 』を最後に、音楽活動を休止。その活動再開の知らせは、誰もが予期せぬ形で訪れた。
昨年7月26日にLINE CUBE SHIBUYA で、約2000名ものファンを抽選で無料招待する形でファンミーティング『與真司郎announcement』を開催。会場ではAAAメンバーもひそやかに見守る中で、自身がゲイであることを告白。ソロアーティストとしての活動を再開することも報告した。“本来の自分”として生きるために選択したカミングアウトは、J-POP界の一線で長年活躍し、多くの人が知るポップスターの告白という衝撃性をもって国内外の多数のメディアで大きく報道されることとなり、いまなお反響を呼んでいる。
あれから、間もなく1年。「なんでも聞いてください」と穏やかにほほ笑む與真司郎は、“名は体を表す”というように、自分の人生を切り開くための“真”の力を“司る人”だ。
イベントではアーティスト活動の再開を伝えたが、そこに至るまでにはキャリアのすべてを捨てる覚悟をもって決意していたカミングアウト。そして「想像以上だった」という発表後の大きな反響の中で、この1年過ごしてきた胸中。久しぶりのツアーへ込められた思いと、アーティストとしての新たな決意を語ってくれた。(全7回の1回目)
──去年の7月に、イベントにファンの皆さんを招待する形でカミングアウトをされてから、もうすぐ1年になります。改めてこの1年を振り返ってみると、どんな思いがありますか?
この1年は本当にいろいろなことがありすぎたので、精神的には結構きつかったです。精神的なアップダウンは、すごく激しかったですね。カミングアウトした後も、自分の感情を整理するのに、すごく時間がかかりました。カミングアウトして良かったのかな、ファンのみんなは大丈夫かな、やっぱりカミングアウトしない方が良かったんじゃないのかなと思ったりして。いまも、少なからずプレッシャーはあります。特にアジアでは、ぼくのようなゲイの人が大きなイベントでカミングアウトをした前例がなく、自分が初めての人という風に見られているので……。
──カミングアウトした後も、心理的な葛藤が続いていたんですね。
そうですね。やはりアジアではカミングアウトすること自体が少ないですし、誤解を受けることもあります。ファンの人からも、「真ちゃん、スカートを履くようになっちゃうの?」、「髪の毛を伸ばしたり、メイクをするようになるの?」っていう声が届いたこともあったんですね。そういう人もいるけれど、ぼくは洋服の好みも外見もいままでと変わらないよ……と伝えると、「そうなんだ!?」と。アメリカやヨーロッパのように公表している人が増えれば、そういう誤解も少なくなるのかなと思います。
──カミングアウトした当日の緊張感は、いまだによみがえったりしますか?
正直、あの緊張感はだいぶ薄れてきてはいます。でも、カミングアウトしたイベントの動画は、いまはまだ見たくないですね。ハリウッドでドキュメンタリー映画の制作が進んでいるので、あの日の映像も絶対に使われるはずですけど。ドキュメンタリーが完成したときに、果たして自分で見ることができるんだろうか……と思ったりします。
──カミングアウトを決めたのは、いつ頃だったんでしょうか?
コロナ禍が始まった2019年の冬です。その少し前から、このままでは自分の人生がマズイ状況になるって感じていました。死ぬまで、本当の自分を隠して生きていくことは嫌だった。自分の性格的には、正直、芸能界は合ってないなって思うんです。でも、芸能の仕事は嫌いじゃない。なによりファンのみんなが好きだし、幸せでいてほしいと心の底から思っているから、それを考えるとどうしようかな……と悩みました。それでも、やっぱり“本当の自分”を知ってもらいたいという思いから、世間に公表しようと決めたんです。