関節に痛みを感じる人は加齢とともに増加し、60才以上の人口の80%以上が、ひざ、ひじ、股関節、脊椎などの変形性関節症に悩んでいるという報告もある。人生100年時代を生き抜くため、やわらげる方法から手術を経た後のリハビリまで、最新情報をジャーナリストの鳥集徹氏がリポートする。【前後編の前編。後編を読む】
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ひざをはじめとして関節痛に悩む人は増加の一途を辿っており、厚生労働省の「患者調査」と「国民生活基礎調査」によると、「関節疾患」の総患者数は2017年度からの3年間で45.4%も増えている。
また、2023年に再生医療関連企業セルソースが行った調査によると、50才以上で「ひざに痛みを感じたことがある人」は40.4%に上っていた。しかしそのうち通院している人は3.2%に留まり、60代では4%、70代でも6.2%だった。
加えて通院中の人のうち、現在の治療に満足している人は38.5%で、満足していない人が61.5%にも上ることもわかった。そのいちばんの理由は、「痛みがとれないから」(72.8%)というもの。
つまり、関節痛に悩む人のほとんどが自分に合った治療法やいい病院に巡り合うことができず、痛みに耐えながら生活しているのが現状なのだ。
「患者さんに心がけてもらいたいのは、医者任せにしていても関節痛は治らないということです。改善するためには、治療を受けながら自分で筋力トレーニングをすることが必須です」
そう話すのは、腰やひざの痛みをできるだけ手術せずに治療する「保存療法」の第一人者である戸田整形外科リウマチ科クリニック(大阪府吹田市)院長の戸田佳孝医師だ。
50才を過ぎると筋肉は毎年1〜2%ずつやせていく。しかも衰えは上半身より下半身の方が大きく、関節を曲げる筋肉よりも伸ばす筋肉の方が早く衰える。特にひざを伸ばす筋肉は30才の時点を100とすると、70才には平均して40まで低下するという。
「だから、痛みを予防・改善するためにも、特にひざを伸ばす筋肉である太ももの大腿四頭筋を中心に鍛えてほしい。アメリカの研究では96才を超えても筋トレを行うことで筋力が増強されることが証明されています。一生続けるつもりで行ってください」(戸田医師)
そこで今回は、「リハビリテーション(以下、リハビリ)」という観点から関節の専門家を取材し、痛みの改善のために心がけるべきことを尋ねた。
リハビリには、「自分らしく生きる場に戻る」といった意味がある。痛みがあると、思い通りに生活できなくなってしまう。関節の痛みから解放されるためにも、ぜひ専門家のアドバイスを参考にしてほしい。