出典/警察庁

出典/警察庁

生涯未婚率や熟年離婚は年々増加し60〜70代の女性は“孤独死予備軍”に

《誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な「孤立死(孤独死)」の事例が頻繁に報道されている》

 内閣府が発表する「高齢社会白書」(2022年版)にはそう記されている。孤独死に確定した定義や全国統計はないが、東京都監察医務院が公表するデータによれば、23区内におけるひとり暮らしの65才以上の自宅での死亡者数は2003年の1441人から2020年は4207人と約3倍に増えたとされる。さらに白書はこう続く。

《死後、長期間放置されるような悲惨な孤立死は、人間の尊厳を損なうものであり、また、死者の親族、近隣住人や家主などにとって心理的な衝撃や経済的な負担を与える。孤立死を、生存中の孤立状態が死によって表面化したものとしてとらえ、生きている間の孤立状態への対応を迫る問題として受け止めることが必要である》

“人間の尊厳を損なう”とまで言わしめる孤独死増加の背景に何があるのか。社会保障政策に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さんが語る。

「まず年齢は孤独死の7〜8割が60才以上で、統計的に男性が多い。女性は男性より長生きするのに男性が多いのは、男性は生涯未婚率が女性より高く、離婚後に家族と離れてひとりで暮らす人も多く、単身世帯が増加したことが一因でしょう。家族のありかたが変化し、人と人のつながりが希薄化したこともひとつの要因です」

 いまは統計上、男性の孤独死が多いが、これからは女性も増えていくと結城さんは予想する。

「現在、女性の生涯未婚率や熟年離婚が増えています。加えて、今後は夫と死別し、子供も独立してひとり暮らしになる女性が増えるでしょう。いま60〜70代の女性は、“孤独死予備軍”と言えるかもしれません」(結城さん)

 孤独死をテーマにした『死に方がわからない』の著者で、文筆家の門賀美央子さんは「高齢者の社会的孤立」も大きいと語る。

「孤独死が増えている最大の理由は高齢者と社会の接点が少なくなったことです。従来のように家族と一緒ではなく、単身で暮らす高齢者が増える中、ご近所や友人知人などとの交流が少なくなった。これまで受け皿として機能していた地域社会の役割が希薄になって高齢者の社会的な孤立が進んだことが、孤独死の増加を後押ししています」

 結城さんは高齢者だけでなく、中高年も孤立化が進んでいると指摘する。

「ひと昔前は会社を無断欠勤したら『何かあったのでは』と同僚が心配して家を訪ねましたが、いまの40〜60代は契約社員や派遣社員など非正規社員が増え、横のつながりがなく無断欠勤しても放置されがちです。他方、正社員もテレワークやフレックス制で社内の人間関係が希薄化して、突然自宅で体調が悪くなったとき、誰にも気づかれず亡くなるリスクが増しています」

第2回へ続く)

※女性セブン2024年6月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
宮崎あおい
《主演・大泉洋を食った?》『ちょっとだけエスパー』で13年ぶり民放連ドラ出演の宮崎あおい、芸歴36年目のキャリアと40歳国民的女優の“今” 
NEWSポストセブン
悠仁さまが2026年1月2日に皇居で行われる「新年一般参賀」に出席される見通し(写真/JMPA)
悠仁さまが新年一般参賀にご出席の見通し、愛子さまと初めて並び立たれる場に 来春にはUAE大統領来日時の晩餐会で“外交デビュー”の可能性も、ご活躍の場は増すばかり
女性セブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト