出典/警察庁

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家具は一切なく台所に寝袋があるだけ

 はたして孤独死は理想的な死なのか、悲惨な死なのか。社会保障政策に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さんが語る。

「確かに、孤独死=悪ではありません。病院のベッドで天井を見つめて死ぬわけではなく、住み慣れた自宅でひとり亡くなるのですから、当人にとっては幸せな死に方かもしれません」

 とはいえ、それでも孤独死には耐えがたい側面もある。結城さんが続ける。

「いちばんの問題は、亡くなってから遺体が見つかるまでの日数が長くなることです。死後2〜3日で見つかれば遺体も腐敗せず、普通にお葬式ができます。しかし発見が遅れるほど遺体の状態は悪化し、周囲に迷惑をかけてしまいます」

 死後、遺体が長く見つからないことへの畏怖が、孤独死のイメージを悪くしていることは間違いない。孤独死をテーマにした『死に方がわからない』の著者で、文筆家の門賀美央子さんが言う。

「一般の人は、自分は死後に腐って見つかりたくないという思いが非常に強い。孤独に死ぬこと、長く見つからないこと、そして自分の体が崩壊した状態で見つかることへの恐れが幾重にも連なり、“孤独死=惨めな死”とのイメージが広がっているのでしょう」(門賀さん)

 自宅で亡くなり、誰にも見つからず長期間放置されると遺体が腐り、異臭が出て、周辺住民が気づいたときにはまさに悲惨な状態となる。特に夏場は遺体の腐敗が早くて大変だという。

 凄惨極まる現場に乗り込み、清掃や洗浄、脱臭を重ねて汚れやにおいを落とし、部屋を元通りに回復させる──その作業を行うのが「特殊清掃業」だ。近年注目が高まり、特殊清掃業をテーマにした漫画や、実際の現場をルポした特集などが盛んに展開される。特殊清掃業を営む武蔵シンクタンク株式会社代表の塩田卓也さんが言う。

「弊社の業務も肌感覚ではありますが、10年前の2倍ほどになっています」

 特にその勢いを加速させたのが新型コロナの蔓延だ。

「コロナで人と人との接触が少なくなり、健康状態の確認が難しくなったことも影響しています。物件とかかわるオーナーや不動産管理会社、司法書士や弁護士などからの依頼が多く、遺品整理と特殊清掃の費用はワンルームで30万〜60万円、3LDKで100万円程度です。遺体や住居の損傷が激しければ200万円を超えることもあります」(塩田さん・以下同)

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