ひとり暮らしの高齢者ばかりでなく、最近は「同居」のケースも目立つという。
「2階に住む親と1階に住む子の交流が少なく、親が息絶えたことに子が1週間気づかなかったり、リビングで亡くなった夫を認知症の妻が“お父さんが寝たまま臭くなった”と見守り、1か月間放置したケースなどが実際にありました。親の介護をする50代の子の体調が急変して亡くなり、続けて80代の親が亡くなる“ダブル孤独死”となることもあります」
超高齢化に伴って孤独死のパターンが多様化する中、物件を借りるハードルも高くなっている。
「いまは物件を貸す側が孤独死を恐れてシビアになり、100万円から200万円ほどの補助金を積まないと高齢独居には貸せないという不動産会社やオーナーが増えています。都営住宅やURも高齢独居は完全禁止です。入居の際、火災保険のオプションである“孤独死保険”への加入を求められるケースもあります」
ひとり暮らしでセルフネグレクトに陥り、室内がゴミ屋敷となった末に孤独死して、遺体と大量のゴミの腐敗が強烈な悪臭を放つ現場も少なくない。
「これまでで最も壮絶な現場は、神奈川県の山間に立つ一軒家でした。ゴミ屋敷に猫が多頭飼いされ、大量の糞尿とゴミの山の中で50代女性が孤独死し、費用はトータルで400万円ほどかかりました」
一方で、真逆の現場もある。塩田さんがいまでも印象に強く残ると話すのは、2階建て一軒家で独居していた70才前後の女性の散り際だ。
「室内に家具は一切なく、ベッドもなく台所に寝袋とわずかなゴミだけが残されて、何とも不思議な感じがしました。亡くなっていたのは玄関の入り口あたりで、小柄なかただったので遺体はそれほど傷んでいませんでした。おそらく自分の死期を悟って、家具などをすべて断捨離したのでしょう」
この女性のように、準備をしたうえで「きれいな孤独死」を迎える人も近年、少なくないという。その証左が、身寄りがなくある程度のお金を持った人から同社に舞い込む、「孤独死しても大丈夫な部屋を作ってほしい」という依頼の増加だ。
「リフォームまでしなくとも、ご自身で布団の下などにシートを敷かれているかたもいます。やはり、孤独死してから時間が経過すると血液や体液が遺体から排出されて、床を侵食して1階下の天井にじわじわと漏れ出ることがあるので、そうした事態を防ぐために、あらかじめ布団やじゅうたんの下にブルーシートや塩化ビニールのシートを敷きつめるリフォームの相談は多いです。
そうしたかたたちの目的は経済的損失を避けること。ですから遺言書も用意していて、“亡くなったらこの家をお金にして市に寄付する”と残していたりします。見事な孤独死といえるかもしれません」
(第3回へ続く。第1回から読む)
※女性セブン2024年6月27日号