個人情報の流出に関するニュースが続いている。最近、多いのは自治体や企業の業務情報があるサーバーが攻撃を受けた結果の個人情報流出だろうか。ところが、札幌市の中学校で起きた事件は、教員が体育館に資料を置き忘れ、回収する8日間までの間にSNSへ情報が流出した、というアナログ(紙)資料からの流出だった。このことをきっかけに、学校における生徒の情報管理について、多くの人から様々な意見が噴出している。ライターの宮添優氏が、批判があってもなお、生徒について詳しい情報共有が必要な理由について現役教員たちに聞いた。
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札幌市の市立中学校で、生徒267人分の個人情報が記された内部資料を教員が置き忘れ、その後、資料がネット上に流出した。当初、市の教育委員会は「外部への流出はない」としていたが、置き忘れた資料は誰かによって撮影され、その後、あろうことか有名インフルエンサーが資料の一部をSNSに投稿したことで、騒動の火はかえって大きくなってしまった。
流出した資料には「低学力」や「嫌われている」、さらには「親に問題がある」などセンシティブな内容も多く記されていた。そこから生徒の個人名を確認することはできなかったものの、当該する学校の生徒たちが見れば、それが誰の評価なのか、ある程度の察しはつくだろう。何より、中傷と捉えられても仕方ないような表現で生徒の評価がなされていたことにショックを受けた、という生徒も多いはずだ。また、家族構成や成績も記載されていたといい、生徒の間に不要な軋轢がもたらされかねないという懸念もあろう。
名札にも”個人情報が漏れる”と過敏な反応
すでに、生徒について資料を作成することそのものが良くないという意見も飛び出しているが、千葉県在住の現役小学校教諭・藤田裕喜さん(仮名・30代)は、どこの公立学校でも、似たような形で生徒の情報を共有していると話す。
「私がいた学校では、申し送りとか、引き継ぎなどの名称で、生徒が中学に行く際、または進級する際に新しい担任の先生や学年主任に情報を共有していました。これは、形は違えど、どこの学校でも必ずやっているはずです」(藤田さん)
当然、そうした資料は完全な「部外秘」であるため、学校によっては職員室から持ち出さない、紙に出力しないなど対策を練っているという。札幌市の事案については、言葉遣い、置き忘れを含めて「教員の自覚が足りなさすぎる」と藤田さんも指摘するが、類似事案がたびたび発生し、一部の保護者やマスコミからは「もう生徒の個人情報を扱うな」という、厳しい声をもらっている、と続ける。