「もちろん、成績や家族、そして本人の評価に関わる情報ですから、慎重に扱うべきであることは言うまでも無い。ただ、こういうことが起きたからといって、学校や教員に生徒の個人情報を扱わせないというのは、あまりに飛躍しすぎです。ごく一部の保護者には、名札も、衣類に名前を書くのも”個人情報が漏れる”と過敏な反応をする人もいますが、もっと冷静に考えて欲しい」(藤田さん)
同じく、関東エリアの公立中学校教頭・石井恭子さん(仮名・50代)も、申し送りや引き継ぎは絶対必要とした上で、次のように訴える。
「確かに、今回の生徒情報流出問題は、教員や学校側に全面的な責任が有り、擁護はできない。ただ、申し送りに使われていたような言葉を使わざるを得ない状況に追い込まれることについても、理解はしています」(石井さん)
石井さんによれば、例えば、たびたび学校に怒鳴り込むような親については「親に注意」などと引き継ぐことはよくあるという。また、問題行動を起こす生徒についても「落ち着きがなく注意力が散漫」とか「隣クラスの生徒と仲良しだが非行傾向」などと記して引き継ぐのだという。
「学力に問題があることも当然引き継ぎます。もちろん、低学力、なんて言い方はせず学習習熟度が低い、といった表現です。今回の件を受けて、生徒情報の引き継ぎや共有ですら止めるべき、という声が上がっているのには驚きました。もちろん、一部にずさんな教員がいることも事実ですが」(石井さん)
今回の問題は教員たちの注意不足、配慮不足などに端を発したトラブルではある。ただ、だからといって、教員から生徒情報を取り上げろとか、詳細な情報を扱うな、などと追及するのは早計だろう。もっとも優先すべきことは、子どもが安心して楽しく学校生活を送ることであり、教員はそのために、必要な生徒の情報を把握、活用しなければならない。衝撃的なトラブルではあったが、脊髄反射的な批判よりも、現場に沿った、子どもたちに有益な冷静な判断が求められなければ、結局不幸になるのは子どもたちなのだ。