立候補に際して、台湾のオードリー・タン氏からも助言を受けたという
出馬を検討しはじめたのはいまから3か月前の今年3月頃で、意思決定をしたのはなんと3週間ほど前の6月初旬。そんな“スピード立候補”を可能にしたのもまた、テクノロジーの力だった。
「個別の政策については、インターネットを通じて手を挙げてくださったエキスパートのかたを集めながら、Slack上で議論を交わし、練り上げて磨きをかけています。いわゆる選挙対策として物理的な”事務所”を持ってはいないものの、すでに600人ほどがチーム員としてかかわってくださっている。ボランティアチームの規模も、日々急速に拡大しています。もしこれが、実際に会って打ち合わせしなければ話が進まないのであればこの速度で進行するのはまず無理でした」
チーム員のほとんどは20代から30代前半。投票率が低く、「政治に関心のない世代」と言われてきたが、安野氏は違った見方をしている。
「初めて”推せる政治家”が出てきたというリアクションをいただくことが多くて……。私が提言している政策のオープンソース化で自分の一票がどう反映されていくか、その道筋が見えるようになったことで、一気に政治を”自分ごと”としてとらえられるようになったのだと思う」
若い世代がテクノロジーの進化を歓迎する一方、「取り残されるのではないか」と拒否感を示すシニア世代は少なくない。
「いまはLINEやYouTubeなど、どんな方でも使いやすいツールが多くある。今のテクノロジーは一部の専門家だけでなくすべての人をエンパワーメントする性質のものになりつつあるのではないかと思っています。
実際、AIが一人暮らしの高齢者の話し相手になっている例もあれば、介護現場において匂いによっておむつ替えのタイミングを測ることができるセンサーを開発したスタートアップ企業もあります。介護する側の負担が減るだけでなく、される側もすぐにおむつを替えてもらえるから不快な思いをする時間が少なくなる。双方にメリットのある状態を作りだすことが可能になるのです。
一方で、テクノロジーを駆使して効率的に物事を進めることと同じくらい、人間と人間が顔を合わせてしゃべったりコミュニケーションを取ったりすることからしか生まれないものもあることも理解しています。ただ、そこもテクノロジーで突破できないかといろいろ私も模索していて、たとえば今回の選挙戦ですとYouTubeライブで私のAIアバターを使って24時間いつでも質問してもらえるようなことをやろうとしています。”票の数は握手の数”と言われますが、AIアバターは握手もできるので、都民の皆さんに安心していただけるような政策の内容はもちろん、握手の数でも他の候補者に負けないぞ! という気持ちでいます(笑い)」