“不動の4番”であり主将──V奪還を目指す巨人の最大のキーマンが岡本和真(27)であることは間違いない。これまでも数字を積み重ねてきた岡本だが、球史に名を残す大打者になるためには、何が足りないのか。
岡本が初めて4番に座ったのは、2018年6月2日のオリックスとの交流戦。当時21歳11か月で、王貞治よりも1年ほど若い4番デビューだった。以来、その重責を担い続け、通算4番出場試合数は巨人歴代5位となった。本塁打数も申し分ない。2018年から「6年連続30本塁打」で、落合博満やアレックス・ラミレス、原辰徳や現監督の阿部慎之助も達成したことがない記録だ。今季も大台に届けば、7年連続の松井秀喜に並ぶ。
大砲の片鱗は、プロに入る前から見られた。岡本の高校時代の恩師で智弁学園野球部監督の小坂将商氏が語る。
「入学当初から体が大きく、打球の強さは私が今まで見てきた選手の中でもちろんトップクラス。何よりも逆方向に飛ばす能力が魅力的でした。下半身が安定しているので無駄な動きがない。軸がしっかりしていて、バットの先端に自分の体重を伝えるのが上手い。この印象は彼がプロになった現在でも変わりません」
交流戦に入ってバットが湿り気味であるが、それでも本塁打と打点はチーム内でダントツの数字。本誌『週刊ポスト』の「好きな現役NPB選手アンケート」でも1位に選出された。ただ、プロ野球OBら関係者からはこんな声も聞こえてくる。ヤクルト、巨人、阪神で4番を打った広澤克実氏が語る。
「これほどの成績を残しているのに、過去の大打者たちほどの高い評価を受けていない印象があります」
ヤクルト村上と比べられ…
なぜ、そこまで高い評価にならないのか。スポーツジャーナリストの広尾晃氏はこう分析する。
「原因の一つは打率でしょう。打者は本塁打数だけでなく“打率3割”も重要視されますが、岡本が達成したのは4番に座った1年目の2018年だけ。通算打率は2割7分2厘です(6月13日時点)。原辰徳の2割7分9厘や阿部慎之助の2割8分4厘から見ても見劣りします。
同じセの4番打者で年下のヤクルト・村上宗隆(24)の存在も大きい。2022年に三冠王を獲得するなど岡本よりもう一回りスケールが大きい。オールスターのファン投票の中間発表でも村上のほうが上でしたし、比較されることで物足りなく映ってしまっているのかもしれません」