4人の子どもたちがインタビューを受ける風景を、目を細めて見ていた俳優・藤岡弘、さん(78)。芸能活動を通して感性を磨いている我が子の変化や成長を、「ザ・昭和の父親」はどのように感じているのだろうか。仲良しファミリーを築き上げた藤岡さんの「子育て論」「家族論」は、子どもの叱り方や家族とのコミュニケーションに悩む全国のファミリーにとっても、大きなヒントになる。失われつつある日本の伝統のなかにこそ、家族の絆を再生させる道があるのかもしれない──。【全3回の第3回。第1回から読む】
──藤岡さん一家の仲良しぶりは、理想のファミリー像とも言えます。子育ての秘訣はありますか。
「子育ては、簡単ではありませんよね。本当に難しい。そんななかでも、僕は子どもたちと常に真剣に向き合い、彼らが抱えている不安や疑問にきちんと耳を傾け、答えてきました。そこで決定的に大事なのは、なにがあってもお父さんはお前たちの味方だし、絶対に守るという姿勢を伝えること。その覚悟を見せることができたら、子どもたちは家のなかでも外でも、安心していられると思うんです」
──“親の覚悟”が伝わらないと、子どもも心と体をあずけられないですよね。
「今になって思えば、自分が子どもの頃に父や母から教わったことを、今、子どもたちに伝えているような気がします。藤岡家の家系の伝承みたいなものでしょうか。もちろんこれは藤岡家のやり方で、すべての家庭に押しつける気持ちなどはまったくありません。ただ、ひとつだけとても重要なのは、どれほど仲が良くても、親と子は『友だち』ではないということ。最近では、友だち感覚のようになっているお母さんと娘さんも見かけますが、『親と子』という線は、明確に引いておかなければいけない」
──その線が引けていないと、子どもをしっかりと叱ることもできません。
「いろいろな状況がありますし、家庭によってやり方は違いますが、人として絶対にやってはいけないこと、道から外れたことには、『間違っている』とはっきり否定しなくちゃいけない。友だち感覚の延長で、なあなあで済ませてはダメ。『ならぬものはならぬもの』と、練り込み擦り込み繰り返し教え続ける。薩摩の“郷中教育”しかり、会津の“什の掟”しかり。かつての日本が脈々と伝えてきた教えが、今は死語のようになってしまい、家庭のなかでも地域社会でも、どんどん消えていっているように感じます」
──4人のお子さんは、「父が怒ると本当に怖い」と口を揃えています。
「人が嫌がること、人を傷つけること、世のためにならないことに対しては、徹底的に真剣に怒ります。そのときの私の顔は、子どもからしたら鬼のように感じるんじゃないかな(笑)。もちろん、いつも怒ってばかりではダメです。僕もなにか叱ったときには、必ずその子のいいところを褒める。けじめさえついていれば、本気で怒っていること、それが真の愛情だということは子どもたちにも伝わります。
子どもが大人の態度を見極める目というのは、純粋である分、本当に鋭い。口先だけで言っているのか、自分の欲を満たすために計算で言っているのか、子どもはちゃんと見分けがつく。子どもの心って、怖いですよ」