子どもの前で愚痴や不満を一切言わない
──実際、藤岡さんのお子さんたちも「怒ると怖いけど、筋が通っているし真剣だから響く」と語っていました。
「子どもって、親の背中をちゃんと見ているんですよね。そういった意味でも親の真剣さというのは、無言の教育と言えるかもしれません。だから、僕は愚痴や不平や不満は一切言わないようにしています。ネガティブなことも言わない。すべてポジティブに考える。なにか子どもが失敗したときも、『お~、いいじゃないか。これを糧にして、次に向かえるんだから。そこまでやれたんだ、まだやれるよ』って逆に褒めてあげる。失敗を責めたくなる気持ちがあっても、責めて終わりでは未来はないですからね」
──そんなお父さんの背中をみて育ったからか、今では4人全員が厳しい芸能界で活躍されています。
「こんなことになるとは、つゆほども考えたことがなかったので、正直びっくりしています。もともと好奇心が強い子たちなので、私の歩んできた道を興味や関心を持って、じっと見ていたのかもしれませんね。彼らが小さな頃から、一緒に映画を観に行ったり、海外でミュージカルやコンサートへ連れて行ったり、歴史を語りながら神社仏閣を巡ったりしてきた影響もあったのかな。家族ではじめてテレビに出演してから5年が経ちますが、子どもたちもだいぶ変わりましたね」
──どういったところが変わりましたか。
「やはり、顔つきが変わってきました。社会に出てプロの集団のなかに入れば、周囲の人たちの意識も空気も違う。学校のサークルでやっていたものとはまったく異なり、その空気を察するようになったんでしょうね。仕事に真剣に向き合うなかで、顔が引き締まってきた。成長していく過程を、明確に感じました。
吉田松陰先生も言っていたように、実践のなかで感性を磨くことの大切さ。人間は感性で生きていて、それを支えるのが知性や理性なんですね。社会に早く放り込んだ方が成長するというのは、こういうことだったのかと、彼らを見ながら感じはじめています」