年代物のワンポイントタトゥー
話をジャーナリストの質問に戻そう。話し合いの席に同席することになり、どんな刺青を入れた怖そうな代表者が出てくるのかと思ったが、出てきたのは関西出身という小柄な年配女性だった。拍子抜けしたが、この女性、席につくなりマシンガントークでジャーナリストを圧倒していった。彼が質問しようにもその間すら与えない。言いたいことを言いたいだけまくしたてると「支援者も多いから、いい加減なことを書かれると困るんだよね。私も昔はね…、刺青を隠す気もないし、そこはきっちりしてもらわないと」。ジャーナリストが目配せするその先に、件の刺青があった。
腕に彫られていたのは、蝶のような花のような年代物のタトゥー。それもワンポイントだ。ヤクザだったとわざわざ豪語するような代物ではない。かなり色褪せ、線がぼけている。代表の年と刺青の古さから推測すると昭和時代、若かりし頃にヤンチャをしていた名残だろう。当時の日本では”タトゥー”という言葉は日常的に使われていなかった。代表がその可愛いタトゥーを刺青と言うのも当然だし、見える所に刺青をいれる女性は少なかったはずだ。周りからはヤクザとの関係を噂されてきただろう。今はそれを逆に利用しているのではないか。
代表とジャーナリストの話し合いは平行線をたどった。帰り道、ジャーナリストは「刺青は本物だったか」と聞いてきた。「本物だが、あれはタトゥーだ」と答えると、ほっとしたようだ。たとえワンポイントでも刺青と言われればヤクザとのつながりを暗示させる。一般人にとって刺青とはそういうものなのだ。