ところが、相談した本社の担当者から驚愕の事実を告げられ、Cさんは全身から力が抜けたような気持ちに追い込まれた。
「迷惑な女性客のことを伝えると、実は系列店でも、同じ女性客が迷惑行動に及んでいました。なぜうちの系列が、と疑問に思いましたが、原因は、我が社の系列ショップでは男性スタッフの顔写真をHPで公開していたからのようです。例の女性客は、HPを見て、次々にターゲットを変えて系列店の別の店舗へと来店している。さらに、系列会社のカフェにもやってきて、若い男性従業員につきまとっていたようで、社内でも一斉に”注意喚起”がなされたほど。うちの店で相手にしなくなって以降は、施設内の別の店舗に入り浸り、施設側が一斉に店舗に注意をうながすビラを配りました。正直、防ぎようがないんです」(Bさん)
「カスハラ」という言葉が注目され、かつて言われた「お客様は神様」の誤用から始まった接客の心得について、無理してまで続けることへの疑問が広がった。その結果、現代では「そこまで考える必要はない」し、カスハラ客には毅然とした対応をとってしかるべし、という空気が醸成されつつある。だがその一方で、客離れを怖れて顧客優位の関係性を運営側はまだ維持せざるを得ず、そのためにセクハラやカスハラを甘んじなければならない立場の人は、サービス業に従事しているかに関わらず、相当数いる模様だ。
「声を出せる現場」の環境だけが改善されればよい、というわけではない。立場上、そして業態の仕組み上、なかなか声を上げられない現場もある、ということは、セクハラやカスハラが問題視されやすい現代において、もっと広く周知されるべき「次の問題」であるに違いない。