草笛光子が90歳にして初の単独主演を務めた映画『九十歳。何がめでたい』が現在、全国公開されている。同作は直木賞作家・佐藤愛子氏の大人気エッセイを映画化した作品。芸歴74年を誇る草笛にとっては初の単独主演作品だが、なぜ彼女は共演者たちからこの上なく愛されるのか? 名だたる共演者が草笛の魅力を語る。【前後編の後編。前編を読む】
金田一耕助シリーズ『悪魔の手毬唄』(1977年)や『病院坂の首縊りの家』(1979年)に出演した岡本信人(76)は、長寿ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系・1990~2011年)でも共演を果たす。
「共演した作品以外も、草笛さんの時代ごとの作品を拝見してきましたが、特にすごいと思うのは“声”ですね。力強い声をキープされているのは、並大抵の努力ではないと毎回感じさせられます」
『渡る世間』で草笛が演じたのは、息子の結婚に策略をめぐらせるちょっと身勝手な資産家役。起用した同ドラマのプロデューサー・石井ふく子氏(97)は女優・草笛光子をこう評価する。
「『ありがとう』(TBS系・1973年)以来、50年来の付き合いになりますが、草笛さんはどんな役でもその役の心を掴んで演じてくれる。特に印象に残っている役柄を聞かれても、彼女の場合、あまりにもそれぞれの役にはまっているから、逆に選ぶのが難しい。
プライベートでもたびたび会いますが、彼女はすごくハッキリしていて、気持ちのいい人。だから一緒にいてとっても気楽なんです。普段は“くりちゃん(草笛の本名は栗田光子)”って呼んでいます」
そうした映画やドラマでの役作りに打ち込む傍ら、SKD(松竹歌劇団)出身の草笛は、自身の“原点”ともいえる舞台の仕事もライフワークにしてきた。2013年に舞台『ロスト・イン・ヨーカーズ』で草笛と初共演したTOKIOの松岡昌宏(47)が語る。
「僕は草笛さん演じるミセス・カーニッツの息子、ルイ役だったので、“ママ”と呼ばせてもらっていました。でも、『新・6週間のダンスレッスン』(2018年)でご一緒してからは、草笛さんに“もうママじゃないんだから、ママとは呼ばないで”と言われました」