志穂美悦子

志穂美悦子

「演技派女優ね」

 草笛は今作『九十歳』でも真矢ミキ演じる娘との丁々発止を演じているが、母親役としてのキャリアは筋金入りだ。草笛と親交が深い志穂美悦子は、最高視聴率40%超えの大ヒットとなった水谷豊主演のドラマ『熱中時代』(日本テレビ系・1978~1981年)で草笛と共演した。草笛が演じたのは校長(船越英二)の妻で、自宅に下宿する教師役の水谷や志穂美らの世話を焼く母親的な存在だった。

「もう45年くらい前ですから、草笛さんは当時まだ40代。だけど、すごく落ち着いた役の中の“おかみさん”という感じをすでにかもし出されていました。リハーサルの合間、時間があればセットの道具を使ってバレエのバーレッスンのように手足を伸ばし、本当にバレエダンサーのように全身のストレッチをずっと続けていた姿が印象的でした。そんな女優さんは誰ひとりお目にかかったことがない。そうした努力が第一線で長く続ける秘訣なんでしょうね。

 ドラマや映画では日本的なおかみさんが似合う一方で、私の知る草笛さんはフランスの女優さんのイメージをものすごく強く持っていらっしゃいました。だから、舞台では外国人になれるし、年齢も若い役を演じられる。“いつまでもドレスでいたいの”と言って、持っていらした着物はすべて処分されたと聞いたことがあります」

 結婚を機に31歳で芸能界の仕事をやめ、現在は「花創作家」として活動する志穂美は、草笛に頼まれて自宅のバルコニーの花壇を受け持っているため、時折自宅を訪れる間柄だ。彼女は草笛が長年、様々な役柄を演じてきたがゆえに今回の『九十歳』での主演があると語る。

「昨年10月、草笛さんの90歳のお誕生日にご自宅にお祝いに伺いました。その時に『九十歳』のお話を聞いて、“もう、主演女優賞ですね”と言うと、草笛さんは“いやいやいや”と謙遜されていました。

 素の草笛さんは本当に可愛らしくて、ご自身の昔の恋愛談義なんかもよくしてくれる。実は昔、1年先輩の岸恵子さんから“あなたは演技派女優ね”という言い方をされたことがあるそうです。岸さんは王道の美人女優でしたから、“聞こえはいいけど、私はきらびやかな雰囲気じゃないってことかしらね”と高らかに笑う草笛さんをかっこいいと思いました。

 自然体でいられるおばあちゃん役は、昔の主演を張ってこられた王道の美人女優さんにはなかなかできません。だからこそ、私はいま、本当に草笛さんの時代が来たとすごく感じています」

 最後に多くの共演者・スタッフから愛される草笛本人が、初の映画単独主演についてこう語る。

「『九十歳。何がめでたい』では、私の体調を気遣っていただきながら撮影が進みました。どの作品もそうですが、スタッフや共演者の皆さんの温かいチームワークのおかげです。これからも新しいことに挑戦していきたいですね。新しい出会いがあったらいつでも飛び込めるようにしておかないと」

 草笛光子、九十歳。さらなる絶頂期に向かっていく。

(了。前編から読む

※週刊ポスト2024年7月19・26日号

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