東京の夏は暑い。2023年は7月6日から9月7日まで64日間も最高気温30℃以上の真夏日が続き、過去最長、35度以上の猛暑日も22日で過去最多を記録した。2024年も厳しい暑さとなる見込みと発表されている(気象庁調べ)。高温多湿で知られるインドからやってきた人に「東京の方が暑い」と言われた、なんて笑い話が定番になりつつあるなか、この時期になると人々を悩ませるニオイ問題がある。ライターの宮添優氏が、職場や通勤電車などでニオイ問題を抱えながら解決の糸口が見つからない人々についてレポートする。
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日中の気温が30度を超える日が続くなど、季節はいよいよ夏本番。この暑い時期に気になるのが「汗」や「汗のニオイ」で、電車や会社など、特に人の多いところへ行く際には、自身から嫌なニオイがしていないか、強いていうならば「エチケット違反」になっていないか、気を付けているという人も多いだろう。
アラフォー男性の筆者などは、汗のニオイに加えて、中年男性臭にも気を使うシーンが増えたと実感する。だが「私ってニオイますか?」などとは、かなり親しい間柄の相手であっても聞きづらい。また、自身の体臭が気になったとしても、「誰にも言えない」問題として黙って抱え込むものだ。一方、最近ではニオイによって周囲を不快にさせるハラスメントを意味する和製英語「スメルハラスメント」なる言葉も広まっている。個人的な問題を超えているという社会意識のあらわれなのかもしれないが、現実には、他者の体臭によって不快感を覚えたとしても、やはり「誰にも言えない問題」として、黙って不満をため込んでいる人が多い。
「やっぱり仕方のないことかなって思うし、誰かのことをクサい、ニオイますよというのはイジメにみたいに感じてしまう。でも、もう我慢の限界なんですよね」
都内の民放キー局に在籍し、情報番組のアシスタントプロデューサー(AP)を務めるHさん(40代女性)は、汗の多くなる初夏から秋ごろまで、男性上司の体臭に悩まされ続けて、もう5年以上が経つ。当初こそ、生理現象で仕方ないことと考えるように努めたが、次第に若い社員を中心に、その上司を露骨に避け始めたのだ。
「社内の席は、上司以外はフリーアドレスで誰がどこに座っても良い。だから、若手はできるだけ早い時間に来て、その上司からできるだけ離れたデスクに座り、上司の周りだけガランとしている。上司本人もうっすらとは気が付いているようですが、こんな状態が続けば仕事だってできない。部下からも泣きつかれ、早く注意してくださいなどと言われますが……。やはり言えないんです」(Hさん)
ニオイの元が上司だったり、知人や友人であったとしても、指摘しにくいのは当然だろう。不快さに加え、相談できないもどかしさによってフラストレーションはたまる一方なのだ。