1987年に刊行された内田春菊さんの漫画で、これまで4回にわたってドラマ化されてきた『南くんの恋人』が復活。男女逆転版としてドラマ『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)が16日、スタートする。なぜ令和の今夏、復活したのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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16日(火)21時から『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)がスタートします。原作は1987年に刊行された内田春菊さんの漫画で、これまで4回にわたってドラマ化されてきました。
まずTBSが1990年に石田ひかりさんと工藤正貴さんのコンビで2時間の単発ドラマとして放送。続いてテレビ朝日が1994年に高橋由美子さんと武田真治さんのコンビで月曜20時台、2004年に深田恭子さんと二宮和也さんのコンビで木曜21時台の連続ドラマとして放送。さらにフジテレビが2015年に山本舞香さんと中川大志さんのコンビで深夜26時台の連続ドラマとして放送しました。
5回目のドラマ化となる今作は男女逆転版。これまでの作品は「ヒロインの堀切ちよみが突然、身長15cmの手のひらサイズになってしまう」という物語でしたが、今回は「恋人の南浩之が小さくなる」という大幅な変化が見られます。
なぜ令和の今夏、『南くん』がひさびさにドラマ化されるのか。また、なぜ男女逆転版が選ばれたのか。その背景や狙いをひも解いていきます。
30年ぶりの岡田惠和脚本に期待
まず、なぜ令和の今夏、『南くん』がひさびさにドラマ化されるのか。
今夏は例年通りの夏季イベントや長期休暇に加えて、パリオリンピックが開催されるなど連続ドラマにとっては難しいクール。パリオリンピックの競技中継で見てもらうことが難しい上に、1週休みなどの放送中断もありえるだけに、民放各局のドラマ班は「どんなジャンルのどんな物語にするか」に頭を悩ませた様子がうかがえます。
その点、『南くん』はアラサー以上の人々にとってはなじみのある作品であり、ブランドとしての知名度と実績は十分。しかも男女逆転版という新鮮さがあり、話題性という点での計算が立ちます。小さくなってしまうのが女子高生から男子高生に変わることでどんな変化や発見があるのか。SNSの動きはもちろんネットニュースの記事なども含めて、今夏の厳しい環境下でも一定の盛り上がりが期待できるでしょう。
さらに「過去4回の中で最もヒットした」と言われる1994年版を手がけた岡田惠和さんが30年の時を経て再び脚本を担うことも強みの1つ。1994年版がヒットし、名作と言われる最大の理由は、「1巻しかない原作漫画を全10話の連続ドラマに昇華させた岡田さんの脚本」と言われるだけに、制作サイドにとっては何より心強い存在でしょう。
ただ、原作者の内田春菊さんは2012年から2013年にかけて男女逆転版の漫画『南くんは恋人』を連載し、コミックも刊行されていました。ではなぜそこから10年超が過ぎた今夏、この作品をドラマ化するのか。
まず夏は昭和時代から「高校生が主役の学園ドラマに最適な季節」とされ、加えて「構えず気楽に見られるファンタジー作との相性がいい」とも言われています。実際、『時をかける少女』(日本テレビ系など)は2016年の夏に放送されましたし、ちなみに当時はリオデジャネイロオリンピックが開催されました。
また、今年は「1月期からさまざまなコンセプトのファンタジー作が量産されるなど、業界内で同ジャンルが見直されている」という背景もありました。ファンタジー作には重いテーマや設定をやわらげられるというメリットがあり、特に「若年層に見てもらいたい」という民放各局の狙いが一致している様子がうかがえます。
『南くんが恋人!?』が放送されるテレビ朝日の火曜21時台は1月期の『マルス-ゼロの革命-』で21歳の道枝駿佑さんを主演起用するなど、このところ視聴者層の若返りを進めていました。しかし、若手俳優の抜てきだけでは十分な結果を得づらいことから、30代以上の視聴者層も狙える『南くん』が選ばれたのでしょう。