今年もプロ野球「オールスターゲーム」の季節がやってきた。40年前、1984年の球宴では江川卓が「8連続三振」を記録した。江夏豊の持つ「9連続」が目前に迫るなか、張り詰めた空気のナゴヤ球場で何が起きていたのか。江川と、バッテリーを組んでいた中尾孝義(中日)との対談によって、連続三振にまつわる新事実が明らかになった。【前後編の前編】
江川:会うのは相当、久しぶりだよな。
中尾:そうだな。懐かしいね。同級生だから出会いは高校生の時だけど、思い出はやっぱり1984年のオールスターでバッテリーを組んだ時。あれからちょうど40年、今日は色々と思い出して話そうや。あの時の江川の球は本当に速かったよ。
江川:実はオールスター第3戦の登板の朝、起きたら肩が痛くなかったの。1982年の夏頃に肩を痛めて以来ずっと苦しんでいたのに、なぜかその日は全然痛くなかった。
中尾:そうだったんだ。当時、肩を痛めていたことは知らなかった。
江川:うまく隠していたからね(笑)。そもそもあの試合は郭源治(中日)さんが先発で3回まで投げ、俺は4回からの登板で「2イニング」の予定だった。
中尾:俺もそう聞いていたんだよ。
江川:だから、最初は三振の記録の意識なんて欠片もなかった。
中尾:1人目は福本豊さん。初球は俺がキャッチングできないほど大きく外に外れるストレート。
江川:肩が本当に痛くないか試しに思い切り腕を振り切ったから(笑)。福本さん、次の蓑田浩二さんまで三振は意識してない。ただ3人目のブーマーさんは狙ってた。この年、三冠王を取る成績で「三振取ってやろう」と思ったのは覚えている。
中尾:インハイのストレートで三振。ボールがグングン来ていたから高めに構えていたんだよな。
江川:1イニング終わってベンチに戻ると三者三振で盛り上がってたけど、「どうせ2イニングで終わるのに」って思ってた。