王監督のプレッシャー
(2イニング目から当時の映像を見ながら対談)
中尾:みんなストレート狙いだから、カーブに対応できてないね。
江川:キーポイントだったのは5人目の落合(博満)さん。「あの人を三振に取るのは難しいな」と思っていたから、一番重要な局面だった。
昔の表示で142キロだから、今だったら155、6キロくらいじゃない? ツーボール・ツーストライクからインハイのボール気味のストレートをうまく投げて空振り三振が取れた。
中尾:次が石毛(宏典)かぁ。あっ、ファウル、やっとバットに当たった。
江川:最後カーブで6連続三振。これで終わりだと思った。だけど、ベンチに戻ったら監督の王(貞治)さんから「せっかくなんだから次も行け」と言われ、「いいです」と断わった。本心は、あのシーズン、ずっと肩が悪くて打たれてばかりで王さんに迷惑かけていた。ここで投げたら王さんは「次もちゃんと投げられる」と期待するじゃない。それが嫌だった。絶対次の登板で痛くなると思ったからさ。
中尾:次の登板は、肩痛くなったの?
江川:予想通り痛くなった(笑)。すぐノックアウトだもん。でも結局、王さんに言われて3イニング行くことになった。