本当にやりたいテーマを追求する
3作連続で“重く暗く辛い”ムードの作品になった理由は、シンプルに「制作サイドが本当にやりたいテーマを追求して作っているから」でしょう。
『君が心をくれたから』『366日』『海のはじまり』の3作はすべて原作のないオリジナルであり、それぞれ脚本を純愛小説の名手・宇山佳佑さん、『最愛』(TBS系)などを手がけた清水友佳子さん、若き天才と称えられる生方美久さんが手がけています。つまり、「この脚本家なら単に重く暗く辛い物語ではなく、訴えたいことや感動につなげられる」ということ。
さらに演出も、それぞれ松山博昭さん、平川雄一朗さん、風間太樹さんと、ドラマの名作を手がけてきた上に映画でも映像美を評価されてきた監督が手がけています。実際に映像の美しさで“重く暗く辛い”ムードをやわらげているため、見続けていれば第一印象ほどシリアスになりすぎていないことに気づけるのではないでしょうか。
いずれにしても制作サイドが、近年ネット上に書き込まれがちだった「重すぎて見ていられない」「何でこんなに暗いのか」などの批判的な声に影響されず、描きたいことをブレずに貫いている様子が伝わってきます。
しかし、単に“重く暗く辛い”ムードの物語では見てもらうことが難しいからこそ、いくつかの“保険”がかけられていました。『君が心をくれたから』はファンタジーの設定と長崎の美しい風景、『366日』は同級生たちとの絆と高校生時代の回想シーン、『海のはじまり』は子役のかわいらしさと海辺のロケーションなどで、「さわやかな印象を加えて見やすくしよう」という配慮が見えます。
これらの制作スタンスがあるため、「重く暗く辛い」という声をあげた人が必ずしも「見ない」という選択をしたわけではなく、むしろ「気になって見たくなる」という人も多いのでしょう。