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【逆説の日本史】清朝皇族と大陸浪人の交流から生まれた「満蒙独立運動」

作家の井沢元彦氏による『逆説の日本史』(イメージ)

作家の井沢元彦氏による『逆説の日本史』(イメージ)

 ウソと誤解に満ちた「通説」を正す、作家の井沢元彦氏による週刊ポスト連載『逆説の日本史』。近現代編第十四話「大日本帝国の確立IX」、「シベリア出兵と米騒動 その1」をお届けする(第1424回)。

 * * *
 大隈重信内閣が基調とする英米協調路線は、英米対決路線よりははるかに「穏健な」方針だが、それは決して平和、それも日中平和をめざすものでは無かった。両路線とも帝国主義を推進し植民地を獲得するという方向性は同じで、中国に対しては可能な限り領土を奪取し利権を獲得しようとするものであった。

 ずっと以前に述べたように、当初はイギリスと、そのイギリスの横暴な植民地支配に反発して独立したアメリカとは、路線が少し違っていた。中国に「開国」を求める際、イギリスはアヘン戦争とアロー戦争で多くの中国人を殺したが、アメリカは日本に対してそのような野蛮な行動には踏み切らなかったし、フィリピンに対してもインドに対するイギリスのやり方を真似しなかった。

 だからこそ、第一次世界大戦の緒戦において中華民国・膠州湾で日本がドイツを駆逐したときも、イギリスは日本がドイツの利権を継承することに反対はしなかったが、アメリカは日本の中国に対する領土的野心を強く警戒した。

 これに対して日本は、前にも述べたようにアメリカの意向は無視し、イギリスと対立しつつもイギリスのやり方は見習うという形を取っていく。たとえば、標的とする国の内部の対立を煽り、中国式の「遠交近攻」で植民地を広げていくというやり方である。イギリスは大国インドをこの方式で植民地化した。国土の面積で言えばインドよりはるかに小さいイギリスが、勝利を収めたのである。

 となれば同じやり方で、中国よりもはるかに国土面積が少ない日本も、中国の一部を奪うことができるはずである。そしてイギリスのやり方を見習うとしたら、現地の民族対立を煽ることだ。だから日本は漢民族の孫文によって「駆除」の対象にされてしまった満洲族をバックアップして、最終的には満洲国を作った。そして、もう一つ漢民族に対抗する勢力として日本が期待した民族がある。それが蒙古族であった。

 そもそも蒙古族と満洲族には、大きな共通点がある。蒙古族は「元」、満洲族は「清」という中国本土を支配する王朝を建てながら、いずれも最終的には漢民族に敗れ故郷の地に追放されたことである。当然漢民族は再び「中原の地」を彼らに奪われることを警戒し、彼らに対しては弾圧的な政策をとった。

 そもそも根っからの農耕民である漢民族と違って、蒙古族も満洲族も遊牧民である。漢民族とは本来まったくそりが合わない。逆に、漢民族の側から見れば彼らを服属させるということは、彼らの故郷である草原地帯を支配し、遊牧をやめさせ農耕に従事させることである。そんなことは文字どおり「まっぴらごめん」であるのが彼らだ。

 この状態は日本から見れば「敵の敵は味方」であり、取り込みようによっては頼もしい味方になるということだ。そこで日本は満洲族だけで無く、蒙古族にも接近した。「蒙古」という言葉は「邪」馬台国のように中華思想を奉ずる漢民族が彼らを馬鹿にして当てた漢字だから、これからは原史料による表記は例外として、原則としては「モンゴル」と表記する。では、モンゴル人(あるいはモンゴル民族)とはどのようなものか?

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