ライフ

大ヒット中の映画『九十歳。何がめでたい』 本物そっくりに再現された“佐藤愛子邸”の裏側と“奇跡的な偶然”

(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

佐藤愛子さんを演じた草笛光子さんは御年リアル90歳(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

 佐藤愛子さんのベストセラーエッセイ『九十歳。何がめでたい』が映画化され、大ヒット中だ。80代や90代のスーパーシニアの新しい客層を掘り起こし、客席では“シニアあるある”に共感し、あちらこちらから笑いが起きているという。

 断筆宣言をして鬱々と暮らす愛子(草笛光子)の元へ編集者の吉川(唐沢寿明)が押しかけ、ぶつかり合う2人の化学反応が新たな人生の扉を開く。そんな本作の舞台の中心となるのは、愛子が暮らす邸宅だ。

 外観はハウススタジオでロケをしたが、内観はセットを設営。佐藤さんの家を訪れたことのある各社編集者が口を揃えて「本物のご自宅にそっくり」と映画を観て驚いた、そんな空間で撮影された。似ているだけではない、「佐藤愛子の世界観」が貫かれたセットは居心地がよく、“家主”である草笛さんが撮影中に「ここに泊まりたい」と漏らしたほど。

 その世界観を見事に作り上げたのが美術デザイナーの安藤真人さんだ。

「ご自宅に入って“映画のワンシーンのような美しい光彩に包まれた空間だな”と心が震えたんです。その空気感を損なわずに映画の佐藤愛子邸を形にしました」(安藤さん・以下同)

 監督が思い描く空間を具現化するのが美術の役割だが、制作過程では異論を唱えることもある。

「初期のホン(台本)ではリビングにこたつがあって内装は古民家のイメージでした。ですが外観を想像すると、古民家ではどうもピンとこなくて……」

 翻意を促すために“本物”を提示しようと考えた。

「実際の建物を見なければ監督も納得されない。そう思い、まずは佐藤先生のお宅の外観を知ろうと調べたんです。つてを辿って場所を探し、ひとりで密かに視察に出掛けました」

 その熱量が天に通じたのか、正式なロケハンとして後日、監督と佐藤邸を訪れる流れに。1時間半ほどかけて、全室を隈なく見学した。各部屋のサイズを測り、壁の状態や天井の高さなど、空間を構成する要素を把握。本物に触れた結果、古民家案から脱して室内セットも佐藤邸に寄せて作られることになった。

「ぼくはセットの間取りや色やサイズといった大枠の方針を決める責任がありますが、実務にあたるのは美術部の各部署です。

 ご自宅で受けたあの感動をどう伝えたら、空間として再現できるのか。人数が限られ、監督と自分しか家へ入れなかったため、実際に見ていない美術チームにどうイメージを伝えるかが最大の課題でした。たくさん撮った写真を共有し、どうすれば肌感覚として空気感が伝わるか言葉選びにも腐心しました」

 安藤さんはセットの平面図や立体図も起こした。

「撮影の都合で実際の間取りとまったく同じにはできませんが、監督の意向で各部屋のサイズ感はほぼ実寸で設計。最終的に現場で少し広げましたが、大きくは変わりません。

 間取りが違うぶん、調度品や絵画など装飾面でご自宅の雰囲気を再現。居間で過ごすリクライニングチェアやキーアイテムとなる電話など、ご自宅で愛用されている実物とそっくりなものを集めました。壁の質感や塗装、木地の色、ポイントで配した縦格子の意匠など、細部までオリジナルを踏襲してリアリティーを追求しました」

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン