社会人野球を引退後は、審判員として高校・大学野球のグラウンドに立ち続けた内海清氏(筆者撮影)

社会人野球を引退後は、審判員として高校・大学野球のグラウンドに立ち続けた内海清氏(筆者撮影)

リプレー検証がない代わりに必要なこと

 一方で、「プロ野球で判定が覆ったりしているのを見ると、カメラは正直だと思う」とも漏らす。人間が判定する以上、ミスジャッジはある。内海も「いつもボールと判定しているコースをストライクとコールしてしまったことはある。それは厳密にいえば誤審ということになるでしょう」と認める。

「仮にストライクと判定しても、球児たちは不服そうな態度を見せません。だからこそ苦しい気持ちにもなります。

 ただ、下手な審判はその後にストライクをボールと判定して先ほどの“穴埋め”をしてしまうことがあるんです。そうなると自分の決めたストライクゾーンがブレブレになってしまいます。その試合ではそのコースは最後までストライクで貫くことが大事です」

 リプレー検証がないアマチュア野球では、審判団が自らミスを認めるようにする動きが進んでいるという。明らかにアウト・セーフを間違えた、打球がワンバウンドしたのにアウトを宣告したというようなケースでは、審判員が集まって協議する。

「以前は仲間の審判員の判定を支持・尊重するのが当たり前の雰囲気でしたが、近年は仲間のミスを指摘し、正確な判定に修正する方向で話し合っています。誤審があってはならないのは当然ですが、映像判定ができない以上、審判員自ら誤審を改めていく姿勢も重要だと思います」

 内海は「アマチュア野球の審判だからこそ、選手や監督からリスペクトされないといけない」とも語る。際どい判定でも“あの審判がアウトと判断したならアウトだろう”と思われるようにならないといけないのだという。

「そうなるまでには時間がかかります。高校野球の場合は、監督や部長が選手たちに審判をリスペクトするように指導しているからか、怪訝そうな顔を見せられた経験はありませんが、大学野球ではすぐに監督がベンチから出てきて抗議されていました。それでも信頼を積み重ねていくうちに、ほとんど抗議は受けなくなりましたね。

“あの審判員は(野球に限らず)いつも公平で、ルールに厳格な人間だ”と思ってもらえることが大事だと思っています。たとえば道路を横断する時には横断歩道を使い、青信号で渡る。誰が見ているというわけではありませんが、そんなことを意識して生活していますよ」

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