野球の審判員には「70歳まで携わりたい」
内海は高校、大学で野球に熱中し、プロ野球の入団テストも受けた。不合格となってからも社会人で軟式野球を続け、31歳で審判員になった。若き日の自分を育ててくれたアマチュア野球への恩返しの気持ちは強く、サラリーマンの激務をこなしながら週末にグラウンドに立ち、審判員として30年のキャリアを重ねた。
信用金庫を退職してバー経営者となった内海は、61歳の今も週末を中心にグラウンドに立つ。高校野球は都道府県ごとに審判員の定年が設けられているが、大学野球の審判員には明確な定年がないので、「少なくとも65歳ぐらいまではグラウンドに立ちたいし、何らかの形で70歳まで携わりたい」と語る。実際、大阪府高野連には70代半ばとなっても、高校野球の練習試合で真夏の炎天下に立ち続けている審判員もいるという。
ただ、「生まれ変わってもアマチュア野球の審判員をやりたいか」と訊くと、「やりませんよ」と即答した。
「他の競技の審判も嫌です。私は生まれ変わっても野球をやって、今度こそプロ野球選手を目指したいですね。まぁ……、それでもプロになれなければ“嫌々ながら”審判員になっているような気もしますけどね(笑)」
(了)
※『審判はつらいよ』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。主な著書に金田正一、長嶋茂雄、王貞治ら名選手 人のインタビュー集『巨人V9 50年目の真実』(小学館)、『貴の乱』、『貴乃花「角界追放劇」の全真相』(いずれも宝島社、共著)などがある。高校野球の審判員のほか、柔道、飛び込みといった五輪種目を含む8競技のベテラン審判員の証言を集めた新刊『審判はつらいよ』(小学館新書)が好評発売中。