都道府県予選の1回戦からトーナメント制で行なわれる夏の全国高校野球選手権大会。甲子園を目指す各校は「負けたら終わり」の真剣勝負を繰り返している。アマチュア野球の審判員を務める内海清氏は、信用金庫勤務のサラリーマン時代には週末を中心に年間80試合ほど審判員を務め、2019年にバー経営者となってからは、平日も審判員としてグラウンドに立っている。一つの判定が試合の勝ち負け、場合によっては選手の人生そのものを左右しかねない高校野球への「ビデオ判定導入」について、『審判はつらいよ』の著者・鵜飼克郎氏が内海氏に聞いた。(全4回シリーズの第4回。第1回から読む。文中敬称略)
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メジャーリーグや日本のプロ野球ではビデオ判定が定着して久しいが、高校野球や大学野球には現在も導入されていない。当然、映像検証を求めるリクエスト制度もない。
日本高野連の寶馨(たから・かおる)会長は2023年12月の理事会後の記者会見で、「ビデオ判定の議論をしているが、審判委員の間で賛否は半々くらい」と明らかにした。“教育の一環である高校野球でそこまでする必要はない”という意見の一方で、“誤審によって野球人生が変わってしまうことがあってはならない”という考えもある。さらにはミスジャッジの映像がインターネットで拡散され、判定を下した審判の個人批判に繋がっていることへの対応も求められているようだ。
ただし導入には物理的なハードルがある。球場のさまざまな角度からカメラで撮影しないと映像判定はできない。高校野球を開催するすべて球場にカメラを設置することは資金的に難しく、映像を撮影するスタッフも必要になる。
プロ野球が開催されている甲子園であれば実施可能といわれるが、甲子園での全国大会のみを対象とするのか、地方大会でも導入するのか、あるいはすべての試合で導入しないのか……議論は分かれている。
自らも高校・大学・社会人でプレーし、1994年に社会人野球を引退した後にアマチュア野球の審判員となった内海清はどのように考えているのだろうか。
「県大会の1回戦でも甲子園の決勝でも、出場している高校球児たちにとって重みは同じです。プロ野球の1軍と2軍は明らかに違いますが(2軍にはリクエスト制度なし)、高校野球の平等性を考えれば当然のことです。県大会の1回戦から導入するならいいと思いますが、甲子園大会だけにビデオ判定を導入するという考え方には賛成できません」(以下同)