芸能人やスポーツ選手による性加害が大きなニュースになるなか、「性的同意」という概念をめぐり、「いったいどうしたらいいの?」という戸惑いの声が聞こえてくる。女性の性に寄り添ってきた富永喜代医師から、性的同意について学ぶ。男性のみならず女性も理解しておくべき性的同意のポイントはどこにあるのか。【前後編の後編。前編を読む】
性的同意をわかりやすく説明したものとして、世界で話題になったのがイギリスのテムズバレー警察署が2015年に制作した「Consent is Everything」(同意こそすべて)という動画だ。セックスを「紅茶」にたとえた内容で、すでにYouTubeで1億5000万回以上視聴されている。
「あなたが紅茶をいれたからといって相手が飲む義務はなく、飲むかどうかは相手が決めること」
「相手が飲まなかったとしても、無理やり飲ませてはいけない」
「最初は欲しいと言っても気持ちが変わって飲まないかもしれない」
「相手が飲まなくても、腹を立ててはいけない」
「意識のない相手に無理に飲ませてはいけない」
こうして性的同意の大切さを説いた動画の内容について、富永ペインクリニック院長の富永喜代氏が言う。
「女性が“欲しい”と言ったので温かい紅茶をふるまっても、“やっぱりいらない”ということもありえます。“あなたが飲みたいというからせっかく用意したのに……”と思うかもしれませんが、それでも紅茶を飲むかどうかは相手の気持ち次第なのです。女性の感情は常に変化しており、心変わりが起きるのは当然だと考えなければいけません。同意を得てホテルに入った後に、“やっぱりイヤ”と断わられても、男性は怒らず受け入れてください」
具体的にどのようなアプローチが望ましいのだろうか。富永氏が推奨するのは「初めてのデートを思い出す」ことだ。
「初めて食事に誘うときは“お腹は空いてる?”“何が食べたい? イタリアン? フレンチ? それともお寿司?”と、どうすれば相手が喜んでくれるかを一生懸命に考え、気を配っていたのではないでしょうか。初めて体を重ねるときも、“嫌だったら言ってね”と思いやりのある言葉をかけていたはずです。告白をして、交際が始まってから初めてキスをしたという人も多いでしょう」(同前)
彼女と一緒にホテルに行ったものの、慎重になりすぎて何もしないまま終わってしまったという、ほろ苦い思い出を持つ人もいるかもしれない。だが、こうした「相手に嫌われたくない」「自分の思いをしっかり伝えたい」という気持ちこそが、性的同意を得るための基本だと富永氏。
「何よりも大切なのは誠意です。女性への気配りを欠かさず、相手の気持ちをきちんと確認する男性は、性的同意をめぐるトラブルになりにくいだけでなく、女性が好印象を持ちやすい」(同前)