仕事と命“どちらが大事ですか?”
だがようやく稽古も終わりに近づいた頃、めまいで倒れて病院に運び込まれる。
「めまいの治療のため、一泊入院したのですが、ふとB型肝炎のキャリアだったことを思い出し、ついでに血液検査をお願いしてみたんです。精密検査の結果、発症がわかり、医師から『いますぐ入院してください』と告げられました。
でもミュージカルの初日まであと10日という状況で、大勢の人に迷惑をかけてしまう。『なんとかなりませんか』とお願いすると、『仕事と命、どちらが大事ですか?』と聞かれて、初めて深刻な状況なのだと理解しました」
舞台の降板が決まり、入院生活が始まった。肝機能障害の治療は「安静」が基本となるため病室から一歩も出られない日々が続くが、入院生活は思ったほど退屈ではなかったという。
「これまで無理しすぎていたからか、ベッドで体をゆっくり休めることができたのはありがたかったです。ただ、病院の壁に貼られていたカレンダーを見るのはつらかった。日付を見ると、『舞台初日なのに、私は病院にいる』と嫌でも思い知らされ、気持ちがふさいでしまう。看護師さんにお願いして外してもらいました。一緒に頑張っていた仲間の活躍を見るのがつらくて、一時期はテレビを見るのも避けていました」