徘徊が始まり、エスカレートしていった行動
さらに徘徊も始まった。
「俺はずっとシルバー(人材センター)に行っていたんだけど、節子は去年の5月くらいから1人で勝手に外に出ていき始めちゃって。買い物に行って、帰って来ないんです。2階の人が探してくれたりさ。さっきあの辺にいたよとか。だんだんそれが増えてきたもんだから、1人にしておけなくなってね」
定年退職後の生き甲斐だったというシルバー人材センターの仕事も辞めた吉田さんだったが、節子さんの行為はエスカレートしていった。
「家を出て行こうとするから、止めるじゃない。そうすると怒って白杖で俺を殴ったりね。玄関にチェーンをかけといても、隙間から白杖を出してバタバタ叩いて『助けてください』って言うんだよ。周辺の人がびっくりしてしまって。
表に出たら出たで、近くにいる工事の人のところに言って『すみません、警察に電話してください』とか言ったこともあったな。奥さんがこんなふうになっている俺もみっともないけれども、節子本人もみっともないわけじゃない。2人とも見栄っ張りだったからね。俺は節子のかっこ悪いところを人様に見せたくないと思っていたし、節子だってそうなんだろうって」
壮絶な生活を振り返る吉田さんは、聞き取るのが困難なほど、細い声になったり沈黙することも増えた。