《被告人(当時80歳)は、約30年間にわたって、妻・吉田節子と共に生活をしていたが、妻の視覚障害の症状や加齢の進行等により、徐々に生活の介助が必要な状況になり、平成28年頃からは、被告人が家事全般と生活の介助を担っていた。妻は、令和5年夏頃、視力をほぼ失っていた上、急激に認知機能等を悪化させており、同年9月までには、被害妄想の混じった支離滅裂又は攻撃的な言動、徘徊行動等が増し、近隣住民等にも影響が及ぶなどしており、被告人のみでは介助や監督が難しく、他に頼れる家族も見当たらない状況になっていた》(殺人罪に問われた吉田友貞さんの判決文より)
2023年10月、妻の節子さん(当時85)に対する殺人容疑で警視庁に逮捕された吉田友貞さん(80)。判決文にも記載されたように、節子さんはほぼ目が見えず、重度の認知症に苦しんでいた。
「今年6月、東京地裁で行われた吉田被告の裁判で事実関係に争いはなく、争点は量刑でした。被告は節子さんの首を両手で締め付けた後、電源コードを首に巻き付けて殺害しています。
介護疲れの殺人だったのか、それとも衝動的な殺人だったのか、裁判員も慎重に検討を重ねて出した結果が、法定刑の下限を下回る執行猶予付きの懲役3年という判決でした。被告の境遇に、島戸純裁判長は説諭で涙ながらに『結果は大変重い。私たちは悩み抜いた上でこの結論にたどり着きました』と語りかけていました」(大手紙司法担当記者)
高齢夫婦の間で起きた“超老老介護”の果ての悲しい事件。2人の間で何があったのか。判決後、事件現場でもある夫婦で暮らしていた自宅で一人で暮らす吉田さんは、NEWSポストセブンの独占インタビューに応じた。【全5回の2回目。第1回から読む】
殺害現場となった自宅に引っ越した夫の「後悔」
「もともとね、節子は学生時代に目の手術をしているんですよ。節子のお兄さんも同じような手術をしていて、遺伝的に目が悪い家系なんです。お兄さんは今も健在なんだけども、もうまったく見えないんだよね。節子は過去に最先端の手術に成功して、見えていたということのようです。それが、だんだんやっぱり見えなくなってきて、60歳を過ぎたぐらいからかな、見えなくなってきたと言い始めたんです。
初めは視野狭窄って言うんだけど、視界が狭くなるみたい。そのうち、左がだんだん見えなくなってきて、右だけになってきた」
約20年前、目が見えづらくなってきた節子さんのために、吉田夫妻は現在の自宅に引っ越していた。