「それはないって言ったら嘘になるね。どっかに……。やっぱり……もしかしたら、それで(節子さんが)楽になれるのかなっていうのはね。うん。俺がじゃなくて」
涙ながらに当時を思い出そうとする吉田さん。
血圧計のコードを抜いた時の細かい点などを尋ねても「覚えていません」という言葉を繰り返すばかりで、並の精神状態では無かったことが窺える。そうしたなか、ただひとつはっきりと覚えていることがあるという。
「1年近くが経った今でも、(節子の首を締めた)手の感覚は残っています」
しわだらけの手を見つめながらそう言葉を絞り出した。
(第4回に続く)