決選投票の計算方法は1回目と異なり、国会議員の再投票(373票)と、都道府県連票(47票)の合計420票で行なわれる。都道府県連票は1回目の党員投票が都道府県別に集計され、決選に残った候補のうち、その都道府県の票を多く取った候補が各1票を得る。
決選投票は議員票の比重が重いため、1回目の投票で多くの党員の支持を集めて1位となった候補が、決選投票で2位の候補に逆転されることが起きる。2012年総裁選では、1回目の投票で1位だった石破氏が、2位の安倍晋三・元首相に決選投票で敗れた。
「前回の2021年総裁選の事前予想では、世論調査で人気の高かった河野太郎氏(現・デジタル担当相)に党員票が雪崩を打って流れ、1回目の投票で過半数を取る可能性があった。
そこでキングメーカーの安倍氏は“河野阻止”のために高市早苗氏(現・経済安保担当相)を擁立。河野氏に流れそうな党員の保守票を高市氏が奪い、河野氏の票を減らした。そのうえで、議員票の比重が重い決選投票で岸田首相が河野氏に勝利した。高市氏は河野票を減らすための“噛ませ犬”として利用されたと見ていい」(自民党閣僚経験者)
その安倍氏が亡くなり、最大派閥の安倍派も解散を決めたことで、現在、自民党で総裁選に大きな影響力を持つ実力者は麻生太郎・副総裁と菅義偉・前首相の2人だ。その2人が対立するか、手を組むかで総裁選の構図は大きく変わってくる。
そこで本誌・週刊ポストは自民党総裁選を長く取材してきた政治ジャーナリストや政治評論家の協力で、総裁選の展開をいくつかのケースに分けて詳細にシミュレーションした。次回記事から想定されるシナリオを紹介していこう。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2024年8月9日号