パリ五輪で“誤審騒動”とともに注目が集まっているのが「ビデオ判定」だ。現代のスポーツ界に登場した最新のテクノロジーは、どう活用されていて、どこに課題があるのか。柔道、サッカー、ゴルフなど様々な競技の審判員に取材した『審判はつらいよ』(小学館新書)の著書があるジャーナリスト・鵜飼克郎氏がレポートする。
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パリ五輪では、「ビデオ判定」をめぐって様々な議論が巻き起こっている。今大会のテニス会場となるクレーコートでは機器の補助が正確にはたらかないとの判断でビデオ判定が導入されておらず、審判による微妙な判定でココ・ガウフ(米国)が涙ながらに導入を訴えた。
一方、ビデオ判定が導入されている競技でも、バスケットボール男子日本代表の八村塁がフランス戦で2つ目のアンスポーツマンライクファールを取られてコートを去った判定に対して疑問の声があがるなどしている。日本のお家芸である柔道でもビデオ判定が導入されているが、誤審が相次いだために批判が絶えない。
とりわけ注目されたのが、柔道男子60キロ級の準々決勝で永山竜樹とフランシスコ・ガリゴス(スペイン)が対戦した試合だ。「待て」の後もガリゴスが数秒間にわたって絞め技を継続したため永山は失神。主審はガリゴスの「一本勝ち」を宣告した。判定を不服とした永山は握手を拒否して数分間畳を降りず、日本チームも「ビデオの再検証」を要求したものの受け入れられなかった。担当記者が言う。
「柔道のビデオ判定には『ジュリー』と呼ばれる審判委員が大きく関わる。1994年から制度化されていたが、ジュリー制度による判定ではたびたび騒動が起き、そのたびに運用方法が変更されてきた。現状では、主審の“技あり”の判断が映像を見ているジュリーによって“一本”に変更されるといったことはあっても、“審判の監督者”であるジュリーが介入したうえでの判定がなされているということで、競技者らの抗議により審判側が誤審を認めて判定が覆るといったかたちにはならない。チェックする人間の能力もあるが、システムとしてうまく運用できていない」