「X選手に失礼だとか、本当は行きつけではないだろうとか、勝手にX選手の名前を使っているだろうなどというクレームが電話で寄せられたんです。X選手側にも許諾をとっていると説明しても、死ね、消えろ、売名だと一方的に言われて電話は切れる。もちろん、テレビを見て、実際に店にやってきたお客さんの中に、そうした失礼な人はいません。すべて電話です。何も事情を知らない人たちが、テレビを見て、条件反射で文句を言ってくるのです」(飲食店店主)

 SNS上には、すでに飲食店の売名行為とか、X選手はほとんど地元におらず店主の虚言だと決めつける投稿まであり、店主は自身が「炎上」の真っ只中にいることを知った。それでも、店を非難する投稿をしている人はごく少数、と考えていたが、影響は翌日も、翌々日も続いた。

「電話やSNSだけならまだよかった。今度は飲食店の評価サイトなどにも、売名だとか、うちで食中毒騒ぎが起きたというデタラメまで書き込まれ、評価も一気に落ちた。まさか、取材を受けたことでこんな目に遭うとは思ってもおらず、目の前が一瞬真っ暗になりました。X選手にも申し訳ないですよ」(飲食店店主)

 さらには「店が炎上しているから話を聞かせてほしい」とネットメディアからも取材依頼がくるなどして、ついに店主は店の一時的な臨時休業を決めたのだった。

「長年かけて守ってきた店が、こんな形で潰れてしまうのかと恐怖でした。X選手の競技が終わる頃には騒動もなんとか落ち着きましたが、良い話で取材を受けても、こういうことが起きるのだなと思うと、もう、目立つことはできるだけ避けたいと思うようになりました」(飲食店店主)

 店主にクレームを寄せた人々の書き込みを改めて眺めると、普段からX選手を憎んでいたとか、飲食店や店主に恨みがあるわけではなさそうだった。要は、活躍するX選手に便乗して、店が目立とうとしている、という思い込みに他ならない。さらに言えば、五輪でお祭り騒ぎのマスコミや、そのマスコミに協力する人たちを攻撃しようとしているのだ。もちろん、便乗して目立って商売しようとしている、というのは言いがかりでしかない。

商売方法も変えなきゃいけない

 関西地方にあるスポーツ用品店店主(50代)も、この数年、似たようなクレームを受け続け、これまで通りの商売が難しくなったと肩を落とす。

「数名の五輪出場経験選手が当店を贔屓にしてくださっているご縁で、過去に何度も、テレビや新聞、雑誌の取材を受けてきました。ですがこの数年、テレビに出ても雑誌に出ても、訳のわからないイチャモンをつけてくる人が多いんですよ」(スポーツ用品店店主)

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