国民の政治不信はピークに達している。裏金問題の後も自民党では「政治とカネ」のスキャンダルが続き、防衛省・自衛隊の手当不正受給の不祥事でも、政治家は誰も責任を取らない。
ところが、自民党内からは首相の責任を問う声さえあがらないのだ。国民が政治の何に怒り、絶望しているかを全くわかっていない。
「ならば、自分がはっきり言おう」と、自治大臣や建設大臣、自民党税調会長などを歴任した野田毅氏(82)が声をあげた。「岸田首相にはもはや国のガバナンスができていない」として、こう語る。
「岸田さんは総理の座にいることが目的で、他に何かをやりたいという旗がない。だから何事も目先の支持率に左右されて場当たり的になる。ガバナンスが利かなくなった最大の理由でしょう」
派閥の裏金問題でも、それは顕著だという。
「自民党の慣例では総理になれば派閥を離脱するものだが、岸田さんは離脱しなかった。それでいていざ裏金問題が発覚すると、いきなり派閥を解散すると言い出した。
民主主義は1人ではできない。派閥と言おうが、グループと呼ぼうが、必ずチームでなければ政治はやれない。それは与野党問わず、民主主義国家ならどの国も同じです。なのに岸田さんは裏金問題が批判されると自分が助かるために派閥のせいにして解散させた。こんなやり方で国民の信頼を回復できるわけがない」
行き当たりばったりのやり方は、政策面でも見られる。
「最初は岸田さんがアベノミクスをはじめ、小泉政権以来の経済政策や強権的な政治手法を見直して、財政再建に柔軟に取り組むだろうと期待していたが、次第におかしくなった。少子高齢化は経済的にも財政面でも深刻な危機です。安全保障もこれから厳しい状況になってくる。少子化対策や防衛費の増額には財源が必要なのだから堂々と増税を訴えればいいのに、岸田さんは『増税メガネ』と呼ばれるのを気にして逆に減税を打ち出した」