オールターゲット戦略に合うサンド
もう1つ“局の顔”を選ぶ基準として重要なのは、各局の主要ターゲット層。現在、民放各局の営業指標は主に個人視聴率が使われていますが、主要ターゲットとなる年齢層は微妙に違います。
まず日本テレビとフジテレビの主要ターゲットは主に「コア層」と言われる13~49歳。「最も商品の購買意欲が高く、スポンサーが求める視聴者層」とされ、親子で見やすい番組やSNSでつぶやきたくなる番組が優先されやすい傾向があります。その点、親子で見やすいムードを作るのがうまい内村さんや上田さん、つぶやきたくなるトークがうまい千鳥が選ばれるのは当然かもしれません。
次にTBSはコア層に幼児と小学生を加えた4~49歳を「新ファミリーコア層」と称してターゲット化。以前は13~59歳を「ファミリーコア」と称してターゲットにしていただけに、他局以上に子どもたちへのリーチを考えている様子がうかがえます。実際、「最も明るいグルメ番組」と言われる『バナナマンのせっかくグルメ!!』や「最もにぎやかな音楽バラエティ」と言われる『オオカミ少年』(ハマダ歌謡祭)の演出は子どもにも訴求できるものでしょう。
一方、テレビ朝日はコア層や子どもだけでなく、あらゆる世代を対象にした“オールターゲット戦略”を掲げてきました。ただ実際のところ主要視聴者層は50代以上の中高年であり、スポンサー受けのいいコア層の個人視聴率は低迷。局の特色を守りながらコア層にも訴求できる局の顔としてサンドウィッチマンが起用されています。
長年テレビ朝日の顔は爆笑問題が務めてきましたが2人は今年59歳と還暦目前であり、今年50歳のサンドウィッチマンにシフトしているのは間違いないでしょう。テレビ朝日には爆笑問題がMCの『○○総選挙』という看板特番がありますが、ここにきて『サンドウィッチマンの禁断ランキング』が立ち上げられ、その内容は重複しているだけに少しずつシフトしていくのではないでしょうか。
もともとサンドウィッチマンは吉本興業の芸人たちのようなにぎやかなチーム芸ではなく、静かなトーンで笑いを取っていく芸風。「さまざまな情報を提供しつつ、そこに笑いを加えていく」というテレビ朝日のバラエティに合うだけに、今夏の特番をきっかけにますます局の顔というイメージが浸透していくでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。