人知を超えた闘病生活で、末期がんを克服せんとするプロレスラーがいる。プロレスラーで東京都文京区議会議員の西村修、52才。4月からステージ4の食道がんの治療を行い、7月には脳への転移で意識不明の重体にまで陥りながら、8月24日のプロレス大会『テリー・ファンク一周忌追悼・大仁田厚デビュー50周年記念大会「川崎伝説2024」』(神奈川・富士通スタジアム川崎)の電流爆破マッチの試合に出場する。
本来なら絶対安静の状況で、妻と5才の息子もいながらも、生死にかかわりかねないデスマッチに挑む。8月22日、合宿地の千葉県いすみ市を訪れたNEWSポストセブンに、そんな常識外れの生き様への思いを、単独インタビューで明かした。
「落ち込むかって? そんなわけにいかないでしょ。大好きな息子だって私を見ている。ここでどう生きるか。今こそ真価が問われる場面ですよ」
太平洋の大海原が一望できる太東埼灯台で、とてもステージ4のがん患者とは思えない分厚い体格を柵にもたれさせると、開口一番、記者の病状と心情を案じた問いかけを一蹴した。
食道がんは左上半身全域に転移し、体中の激痛で仰向けに寝ることもできない日々。急きょの抗がん剤治療を始めて4か月。そこから入退院を繰り返して、7月には脳腫瘍によるけいれん失神でICU(集中治療室)へ緊急搬送。脳への放射線治療も経てボロボロなはずなのに、不思議と精気に溢れて、発言もとことん前向きだ。
「“悪液質”という医学用語をご存知ですか? がんと抗がん剤や放射線治療の副作用で心身を猛烈に削られて、食欲が無くなり痩せ細っていくことを指す言葉です。要するに重病人は、負のスパイラルで坂道を転げ落ちていくわけです」
例えば、病院食を食べ残せば、さらに胃に軽い食事に変わっていく。ベッドで終日寝たきりでも、その辛さを知る医師や看護師は、怒らずにそっとしてくれる。
「体を甘やかしたら、あとは尻すぼみに弱るだけ。がんを治すなら、化学治療だけじゃなく、自分でもいっぱい栄養を摂って体力をつけなきゃ。腹を減らすには体を動かすトレーニング。ICUから退院したときは、スクワット3回すらできなかったけれど、頑張ってもう1回増やせば、次は4回、5回と増えていく。今は朝に300回、午後は全身の筋トレができるまでになって、4月の初入院時よりも体力は上がってきました。もうリングでも戦えます」