ライフ

《シリーズ累計11万部突破》マンガ『トラとミケ』、いか文庫店主・粕川ゆきさんが語るその魅力「ふふふと顔が緩んで、元気をもらえる」

第6巻 第61話「春色の候」より

第6巻 第61話「春色の候」より

 ねこまきさんが本誌・女性セブンに月イチで連載するマンガ『トラとミケ』。発売されたばかりの単行本第6巻も絶好調だ。発売早々重版が決まり、シリーズ累計部数は11万部を突破。あるファンのかた曰く、「トラとミケは年を重ねれば重ねるほど、心にズシンと響く」とのこと。ニャンでなのか──。いか文庫店主の粕川ゆきさんが、『トラとミケ』の魅力について綴る。

 * * *
 私は今年、40代後半に突入した。普段から歳より若く見えると言われ、まんざらでも無い気持ちから余裕をかましていたので、年齢という数字をそこまで意識したことがなかった。が。1か月ほど前に突然、頭の一部分に白髪が5本あることに気がついた。今までは白髪になりかけたものを見つけることはあったもののほぼ無いに等しかったので、完全に真っ白な5本に思い切りショックを受け、「がーん」と声に出してしまった。

 それから少し経った8月のはじめ、『トラとミケ』の最新刊6巻が届いた。このマンガは、猫の姉妹「トラ」と「ミケ」が営む、どて煮屋を舞台にした物語。地元の猫たちが毎夜集ってお酒や料理、会話を楽しむ様子が描かれている。さて読むかと本の帯に目をやると……「80歳。青春真っ盛り!」の大きな文字が。さらに裏表紙側の帯には「人生、くたびれてからが面白い。」と付け加えられていた。そうだったそうだった、私なんてまだ人生半分を過ぎたところ。これを読むたびに、おばあちゃんになるのも楽しみだなぁふふふと顔が緩んで、元気をもらえるのだった。読後はさらに、白髪も、下っ腹のでっぱりも、痩せてきた歯茎も私の一部。全て愛してやろうじゃないか!と気持ちが軽くなった。

『トラとミケ』の最大の魅力は、とにかく優しい気持ちになれること。その大きな理由としてまず、鉛筆と水彩で淡く柔らかく描かれている絵と、手書き文字で描かれたセリフがあると思う。絵と文字が目に触れるだけで、穏やかな気持ちにさせてくれる。

 それと、作者のねこまきさんが伝えたいとおっしゃる「世の中にはいろんな人生があり、いろんな人がいる」を心から実感できるところ。仕事が上手くいかないネイリスト、DV夫から逃げた母娘、トラの初恋の人との再会、夫と妻に先立たれた2人の大人の恋愛など、主人公2人だけでなく登場人物みんなに起こる出来事が、回想とともにじっくり丁寧に描かれている。だからふと、自分の思い出がアルバムをめくるように蘇ってくる。家族や身近な人たちに与えてもらった愛情を思い返しては、物語と記憶両方から、じんわり温かく包まれている気持ちになれる。そう、自分も自分なりの人生を歩んできて今があるんだよな。良いこともそうじゃないことも、そして加齢もすべて肯定しよう、とも。

関連キーワード

関連記事

トピックス

広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
《事故前にも奇行》広末涼子容疑者、同乗した“自称マネージャー”が運転しなかった謎…奈良からおよそ約450キロの道のり「撮影の帰り道だった可能性」
NEWSポストセブン
筑波大の入学式に臨まれる悠仁さま(時事通信フォト)
【筑波大入学の悠仁さま】通学ルートの高速道路下に「八潮市道路陥没」下水道管が通っていた 専門家の見解は
NEWSポストセブン
広末は再婚へと向かうのか
「これからもずっと応援していく」逮捕された広末涼子の叔父が明かす本当の素顔、近隣住人が目撃したシンママ子育て奮闘姿
坂本勇人(左)を阿部慎之助監督は今後どう起用していくのか
《年俸5億円の代打要員・守備固めはいらない…》巨人・坂本勇人「不調の原因」はどこにあるのか 阿部監督に迫られる「坂本を使わない」の決断
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者(44)が現行犯逮捕された
「『キャー!!』って尋常じゃない声が断続的に続いて…」事故直前、サービスエリアに響いた謎の奇声 “不思議な行動”が次々と発覚、薬物検査も実施へ 【広末涼子逮捕】
NEWSポストセブン
「居酒屋で女将をしている。来てください」と明かした尾野真千子
居酒屋勤務を告白の尾野真千子、「女優」と「女将」の“二足のわらじ” 実際に店を訪れた人が語る“働きぶり”、常連客とお酒を飲むことも
週刊ポスト
再再婚が噂される鳥羽氏(右)
《芸能活動自粛の広末涼子》鳥羽周作シェフが水面下で進めていた「新たな生活」 1月に運営会社の代表取締役に復帰も…事故に無言つらぬく現在
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン